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源氏物語

源氏物語たより208

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  『何事も生ける限りのためにこそあれ』 源氏物語たより208

 『宇治十帖』は誠に面白い。中でも『浮舟』の巻は出色である。
 既に述べたことであるが、源氏物語を読み始めたころは,光源氏のいなくなった『匂宮』以降の巻は、クリープを入れないコーヒのようなものだと思って、ないがしろな読み方をしていたのだが、何度も読むにしたがって、宇治十帖の緊迫感のあるドラマチックな筋の展開に一喜一憂させられるようになっていった。
 大胆で無謀な匂宮と、体面ばかりを気にする薫との思考や行動が鮮やかに描き分けられていて、思わず二人に声をかけてしまうほど感情移入させられてしまう。
 「なぜそんな無謀なことをするの!」
 「なぜそんなにメンツばかりにこだわるの、一歩思い切って踏み出しなさい!」

 それでは、あらためてここに至るまでの内容を紹介しておこう。
 匂宮は、今上と明石中宮の第三皇子で、源氏の孫にあたる。彼は、今上と明石中宮の溺愛の下に育った。
 薫は、源氏の子ではあるが、実は源氏の妻・女三宮と柏木との間の不義の子である。薫は自分の出生に疑問を持ち、世の中に対して懐疑的である。そのため、道心の思いも強く、宇治に隠棲している八の宮(源氏の弟)に、法の教えを受けに通いなどしていた。そのうち、八宮の娘・大君に痛く魅かれるようになる。しかし、彼女は早世してしまう。すると今度は、大君の妹・中の君に心が移っていく。中の君は、すでに匂宮の妻になっているのに。彼の「道心」はどこへやらといったところであるが、中の君も人の妻では思うに任せない。

 そんな時に、中の君は、薫の気を逸らせるために、大君に瓜二つの腹違いの妹・浮舟を紹介する。薫も、浮舟を大君の「形代」として世話をするようになるのだが、権大納言という体面を憚って、彼女を宇治に隠して、時折逢いに行くと程度であった。
 この浮舟が、匂宮の邸・二条院で、姉・中の君を頼って仮宿りしていた時に事件が起こる。たまたま彼女の姿を匂宮が見てしまったのだ。そこで無体な行為に及ぶのだが、この時は辛くもことなく終わる。
 ところが、匂宮は、魅力的であった女(浮舟)のことを忘れることができず、何としてでももう一度逢いたいと考え、ついに宇治に隠されていた浮舟を見つけ出してしまう。
 早速彼女の姿を見ようと、ある晩、宇治行きを決行する。最初こそ「垣間見」だけで京に帰るつもりでいたのだが、腕を枕にして臥している女(浮舟)の、あまりの可愛さ、情の細やかさなどが何とも好ましく感じられ、このまま帰ってしまうにはしのびなくなる。そして、
 『いかで、これを我がものにはなすべきと、心も空に』
なってしまった。この女を薫から奪ってしまおうというのである。
 そこで、薫の声を真似て女房を欺き、部屋に入り込み、ついにこの女と契ってしまう。

 夜はひたすら明けに明けて行く。朝になる前に京に帰らなければならないが、女がいとしくてたまらず、とても帰る気になどなれない。このまま帰ってしまったら、二度とここにやってくることはできまい、京では母・明石中宮や多くの人々が、大騒ぎをして、自分の居所を探し求めていることであろう、でも今日だけはなんとかここにとどまり、女と一緒にいたい、と念じる。そこで彼はこう思う。
 『何事も生ける限りのためにこそあれ』
 「何事をするにも、命あってこそ可能なのだ、死んでしまえばなにができるというのだ」ということである。
 確かなる真理である。彼の言うことに何の誤りもないし、我々も「命あっての物種」ということをしばしば実感するところだ。特に恋は、生きているからこそできることであり、生きている証になるものである。
 しかし、命ある時に何でもしていいということではない。それが生きていくうえでの社会の規範である。自由勝手に「これ」を行使しようとすれば、必ず何かと衝突し軋轢が生じる。「生きる限りのため」といっても、ことを起こすにあたっては、何かと支障が出てくる。

 匂宮の場合は、まず立場が許さない。なにしろ今上の第三皇子なのである。東宮にことあれば、それを継ぐ立場にあるのだ。現に親は「お前を天皇に」などとほのめかしたりしている。そんな身の上では一時たりとも所在を曖昧にするわけにはいかない。
 もう一つは、浮舟は薫の妻であるということだ。それを犯すことは人倫に背くことになる。特に匂宮と薫とは、幼い時からの親しい仲であった。友を裏切ることにもなるのだ。とても許されるものではない。
 それでも、彼は立場を顧みず、人倫を破り友情を踏みにじった。

 匂宮は、幼い時から、なにごとにも薫に対抗意識を持っていて、「我負けじ」の意識が強かった。たとえば、薫が生れつき体臭が特異で、素晴らしい香りを発するという評判を聞くと、自分も負けまいとさまざま香に凝ったりしたのである。また、薫の女性嗜好に、彼もまたあわせる、といった具合である。なんでも薫が、彼の行動を突き動かしてきたのだ。
 浮舟は確かに素晴らしい容姿と優れた人柄の女性であったかもしれないが、「薫のもの」ということが、かえって匂宮の欲情に熱い火をつけてしまった。
 彼は、明石中宮に溺愛されて育った。子供の頃からおませで、頭の回転が速く、奇抜なことを言っては、大人の喝さいを得てきた。自分の言うことなすことがすべてみな人の歓心をかい、何事も許されてきてしまったのだ。
 そんな環境では、理性というものが正常に働かなくなる。本能に任せて直情的に突っ走るようになる。事実、彼は後年、無謀で無責任で、破滅的な行動を取るようになった。
 しかし、そんな匂宮に浮舟が痺れてしまうのだから、男女の仲ほど不可解なものはない。恐らく匂宮の明日をも考えない直情径行が、彼女自身をも、「何事も生ける限りのためにこそあれ」と思わせるようになったのだろう。彼女は薫のことを思いながらも、破滅的な禁断の世界に溺れていく。


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