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源氏物語

源氏物語たより227

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   密会発覚までのスリリングな展開  源氏物語たより227

 光源氏は、大胆にも朧月夜のところに忍び込んで、密会を楽しんだ。しかも一度だけではない。
 『わりなきさまに(無理な状況で)夜な夜な対面し給ふ』
のである。朧月夜は、弘徽殿女御(今は大后)の妹であり、右大臣の娘である。つまり源氏は敵方の邸に夜な夜な忍び込んでいるというのだ。
 こんな無謀な行為が、無事に済むはずはない。
 それにしても身の破滅になるような無謀を、源氏ともあろう者がどうしてしたのだろうか。
 考えられる一つに、朧月夜が殊の外魅力的だということがある。ただ、現在は源氏の後ろ盾であった桐壺院が亡くなって、右大臣の世になっているのだ。源氏にとっては極めて危うい時期である。それでなくても弘徽殿女御は、日頃源氏を蛇蝎(だかつ)の如く嫌っているのだ。それは生理的ともいえるもので、何か少しでも源氏に瑕疵(かし)があれば、一気に彼を葬り去ろうと構えているのだ。そんな敵地に、いくら魅力的な女だからといっても、忍び込むというのはあまりに危険すぎる。計算高く、思慮深い源氏としては考えられない行為だ。
 恐らく何かほかに魂胆があるのかもしれない。しかし今回はそのことを追求することが目的ではない。二人が密会を続け、そのことが発覚するまでのスリリングな筋の展開を追ってみなければならない。

 それは、朧月夜がわらは病の治療のために里に帰っている時のことであった。
 おそらく密会の機会を作ったのは、朧月夜であろう。というのは、これより以前、源氏と会わなくなって久しくなった時に、彼女は、自分の方から源氏に手紙を出しているからである。それには源氏に逢いたいという旨のこんな歌が添えられていた。
 『木枯らしの吹くにつけつつ待ちし間に おぼつかなさの頃も経にけり』
 (あなたから便りがあるのでは、とずっと待ち続けていたのに、もう待ち遠しいという期間さえ過ぎてしまいましたわ)
 女から男にたよりを出すということは、当時の社会では考えられないことであった。しかも彼女は、帝の妃なのである。そういう立場の女が男に手紙を出すなどということはあってはならないことなのだ。彼女は、相当型破りで奔放な女だったのだろう。
 今回逢うようになったのは、彼女が里に戻っている時で、
 『例の珍しき隙なるをと、聞こえかわし給ひ』
てだった。源氏が「逢うには絶好の機会」と思ったのだが、「聞こえかはし」ということは、互いに消息のやり取りをしていたということである。まずは女が知らせたのだ。
 この時は、弘徽殿女御も里に戻っているという危うい期間でもあった。
 『けはひいと恐ろしけれど、かかることしもまさる御癖なれば、いと忍びて度かさなり行けば』
とある。恐ろしいのなら止めればいいのだが、止めない。このように障害が多ければ多いほど一層燃え上がるのが源氏の「御癖」というのだから、止めようがない。
 
 何度目かの密会のその夜、
 『雨、にわかにおどろおどろしう降りて、神(雷)いたう鳴り騒ぐ』
という天候になってしまった。あかつきの頃には、ものすごい雨と雷で、右大臣の邸は大混乱。右大臣の息子たちや宮づかさ(皇后の世話を焼く役人)たちも騒ぎ回っている。
 二人が密会している部屋の周りにも、女房たちが集まってきた。こんなに人目が多くなってしまっては、源氏はもう部屋の外に出ることができない。源氏を手引きした女房も手の施しようがなくなった。
 ついに夜も明け果ててしまった。
 雷が鳴り止み、雨が小降りになった時、右大臣が弘徽殿のいる寝殿にやって来た。ところが、二人は雨や雷の音でそれも聞こえなかった。
 すると今度は、右大臣は、ずかずかと朧月夜のところにやって来るなり、御簾を引き上げ、大声をかける。
 「どうだ、大丈夫か!ひどい雷雨だったのでもっと早く来ようと思ったのだが・・」
 ひどい早口で軽率な言い方である。源氏はこんなピンチだというのに、右大臣の人となりを批判しながら聞いている。
 「ちゃんと部屋に入ってからものを言ったらどうなのだ」
と。でも内心は
 『いと胸つぶらはしく思さる』
ドキドキひやひやしているのだ。
 しかしこの状況では、いかんともしがたい。
 源氏が見つからないようにと、やむなく朧月夜は、几帳台(ベットルーム)から、いざり出た。
 と、何と彼女の衣に、男物の帯がまとわりついてきてしまったではないか。もちろん源氏の帯である。彼は夜の営みのために帯を解いていたのだ。
 さすがに右大臣はその帯に目を止め、「怪しい」と思う。
 見れば几帳の下に源氏がすさびのために手習いをした「畳紙(たとうし メモと取ったりする紙)」まで落ちているではないか。右大臣はそれにも目を付け、
 『給へ(よこしなさい)。それを取りて、「誰が」と見侍らむ』
と言って、畳紙を取り上げて見ると、紛れもない、源氏の筆跡である。
 万事休すである。朧月夜は、返す言葉もなく茫然自失の態になっている。
 ところが、ここでも源氏はまた右大臣批判をしているのだ。
 「まったく、せっかちで落ち着きがないんだから。これでは娘としてもいたたまれなくなるだろうに。左大臣とは比べものにならない」
 何という男だ。「あなた、そんなこと言っている場合ではないだろう」と読んでいる者の方がドキドキひやひやしてしまう。
 右大臣は、よせばいいのに寝床の中まで覗き込んだ。するとそこには
 『いといとうなよびて、つつましからず添ひ臥したる男』
がいるではないか。なよなよと美しい男が平気な様子をして添い臥していた。源氏としてはもうじたばたしてもはじまらない。別に平気でいたわけではなかろうが、右大臣には源氏の態度がそう見えたのだ。
 それでも、見つけられてしまった今になって、源氏は袖で顔を隠す。
 さすがの右大臣も、それ以上面と向かって男と顔を合わせるわけにもいかない。畳紙を掴むや、弘徽殿女御のいる寝殿に向かってどたどたと御注進に去って行った。
 逢引きの現場を親に見られてしまった朧月夜は、心神喪失の状態である。源氏は、あれこれ慰めるのだが、今更どうにもならない。
 こうして密会事件は幕を閉じた。 

 密会発覚までのスリリングな描写は、あたかも現代サスペンス作家のように、ぐいぐいと畳みかけて、事件の終幕に向かって急坂を転げ落としていく。しかも緊迫感の中に、くすぐりの場面まで用意してあるのだから、恐ろしい。男の帯が女の衣にまとわりついて出てきてしまったり、ベッドルームになよなよとした男が臥していたり、現実の画面として想像すると、吹き出してしまうところだ。また、絶体絶命のピンチの中で右大臣批判をしている源氏の姿など、スリルとくすぐりの滑稽をないまぜにしながら描いていく。なんという紫式部の筆力の確かさ。

 ところが、源氏にとってはこれが事件の終幕ではなかった。弘徽殿女御には、源氏を潰す絶好の種が見つかったのだ。このまま済ますわけにはいかない。今後は、弘徽殿女御の圧力は陰に陽に強まっていくはずである。彼はついに都落ちを決意する。
 密のように甘い逢瀬ではあったが、同時に誠に危険をはらんだもので、嵐の夜の逢引きは源氏にとっても激しい嵐になってしまった。こんな嵐を越えて、彼は果たして京に帰ることができるのだろうか。
 紫式部の筆に読者は翻弄される。


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~ Comment ~

NoTitle 

宿題?の伊勢物語69段を読みました。会いたくても会えなかった男女の歌は判り易かったです。光の君と斎宮とのやり取りと、とても似ていて面白く、伊勢物語の方が恋の切なさを感じました。
紫式部の博学ぶりには本当に驚きましたが、光の君の性格はどんなに優れた人にも短所があると言うことを作者が言っているように感じます。
光の君への感情移入は読み人が男性と女性とでは大きく違うのかもしれないと思いました。

伊勢物語の作者には色々な人の説があると言うのも興味深いです。

伊勢物語他 

> 宿題?の伊勢物語69段を読みました。会いたくても会えなかった男女の歌は判り易かったです。光の君と斎宮とのやり取りと、とても似ていて面白く、伊勢物語の方が恋の切なさを感じました。
> 紫式部の博学ぶりには本当に驚きましたが、光の君の性格はどんなに優れた人にも短所があると言うことを作者が言っているように感じます。
> 光の君への感情移入は読み人が男性と女性とでは大きく違うのかもしれないと思いました。
>
> 伊勢物語の作者には色々な人の説があると言うのも興味深いです。

 伊勢物語や大和物語は比較的に文章が短く読みやすい感じがします。短い中に、それぞれ味わいのあるものがあり、源氏物語とはまた違った面白味があります。大和物語も後半のやや長い文章には、いいものがあります。この中に僧正遍照の話などが載っていて、彼の生き方がわかり参考になります。
 伊勢物語は、源氏物語に強い影響を与えており、そもそも伊勢物語の第一段が、すでに、源氏物語『若紫』の巻の下敷きになっています。また、69段は、業平と斎宮のやり取りが、光源氏と斉院・朝顔との関係の元になっている気がします。
 とにかく紫式部という人は、過去の資料を貪欲に活用していて、驚くほどです。『桐壺』の巻はもちろん『長恨歌』をもとにしておりますし、白楽天はもとより、史記や文華秀麗集など漢文を非常に効果的に活用しています。また、古今集や後撰集はすべて記憶していたのではないでしょうか。自由自在に使い切っています.古歌をもとに物語を作成しているようなところもあります。彼女は、どれだけの頭脳を持っていたのか計り知れないものがります。

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