郷愁

食物連鎖の果てに

 ←源氏物語たより245 →多摩動物園に行く
    食物連鎖の果て


 もうだいぶ前のことだが、「小笠原の父島で昆虫や植物が絶滅しかけている」というニュースほど、私を震撼(しんかん)とさせたものはない。
 父島では、グリーンアノール(体長15cmほどの外来のイグアナの一種)が繁殖し過ぎて、昆虫を食い尽くしてしまい、父島にはほとんど昆虫がいなくなってしまったというニュースである。都内の公園の方が、まだ昆虫は多いそうだ。
 そして、グリーンアノールは、食べるべき物がすっかりなくなってしまって、ついに自分の子供を食べ始めているという。そのことを新聞には“末期症状”と表現していた。まりにも戦慄的な状況で、想像するだに身の毛がよだったものだ。
 ところで、植物までがなぜ絶えてしまうのだろうか。それは昆虫がいないために、植物が受粉できず、植物の種(しゅ)を保てなくなってしまうかららしい。
 『食物連鎖』という言葉がある。ある生物が他の生物を捕食することによって、増えていく。しかし、一時期増えすぎたとしても、他の生物がその増すぎた生物を捕食していくので、全体としては生態系そのものが崩れてしまうということはない。 こういう循環によって、生物の命は微妙にしてまた効率的に保たれているのだ。
 父島にはグリーンアノールを捕食する生物が存在しなかったことが、そもそもの悲劇なのかも知れない。グリーンアノールが、かって棲(す)んでいた地には、彼らを捕食するものが存在していたはずで、そのために、彼らの種が絶えてしまうなどということはなかったのだ。このままでは彼ら自身が滅びていくことだろう。
 『山猫とウサギ』の話は、食物連鎖の例としてよくあげられる話である。山猫が増えると、彼らに捕食されるウサギは減っていくが、増えすぎた山猫を捕食する猛禽類などがいて、生態系のバランスを保つ。そして、山猫が減れば、今度はウサギが増える。生物の世界とはそういう循環を営々として繰り返してきたのだ。また、山猫自身にも、これ以上ウサギを捕らえてしまっては、自らの滅びにつながってしまうという自覚本能みたいなものがあって、抑止力が働くのかもしれない。
 ところで、私を震撼とさせたのは、グリーンアノールの“末期症状”は、人間にも当てはまるのではないだろうかということである。つまり、人類の滅びを暗示してはいないかということである。
 世界の人口は、今64億人といわれる。70億人になるのも近いという。中国だけでも13億、インドが14億、アフリカの実態はわからない。
 その人類が、様々なものをものすごい勢いで食い尽くしている。
 まずは緑を食い付くしてしまって、地球の砂漠化は信じられないほどのスピードで進んでいる。海の様々な生物も枯渇しはじめた。科学文明に必須の地下資源なども底をつこうとしている。
 先に、アフリカの人口の「実態はわからない」といったが、アフリカ中央部の貴重な動物たちが、増えすぎた人間の食や欲のために次々滅んでいっていることは周知のことである。また、アジアのある地区では、「象や猛獣が、人間の住家を侵すので」という大義名分のために、彼らを殺したりわずかの棲み地に追い遣ったりしていると聞く。実は人間が、彼らの住家を侵していったのだが。
 さて、この行き着く先は何だろうか。グリーンアノールが自分の子供を食っている姿を連想するのは、考え過ぎであろうか、あるいは妄想であろうか。
 私は、環境の問題で、一番大事なことは、「人口をいかに抑制するか」ということであると切実に思っている。このことこそ、環境問題の解決につながる最大の近道であるのだ。それを誰もが分かっているはずなのに、“生命の尊厳”という絶対的命題の前に、口にすることがタブー化されている。
 そして、実に些末(さまつ)なことで騒いでいる。やれ風力をおおいに活用すべし、やれ都市のビルは緑化すべし、やれ電気のスイッチはこまめに切るべし…と。それにもかかわらず、もっとも肝心なことから目をそむけている。
 今、日本では、“少子化”が大問題になっているが、私にはなぜあれほど騒ぐのか、理解できない。労働力の確保ができないという、少子高齢化になって国に活力がなくなるという。しかし、このような認識は、「環境を大切に!」という認識とあい矛盾した概念であることに気付かないのだろうか。繁殖しすぎた人類をいかに減じるかが大命題なのであるのに。この視点でみれば、日本の少子化は、“人類の繁栄”のために大きく貢献しているといえるのだ。
 中国では、「一人っ子政策」が実施されて久しい。中国がいかに広大な国土を持っているとはいえ、13億の人民を養えるはずはない。それゆえ、一人っ子政策は中国の待ったなしの問題だったのだ。
 それにもかかわらず、外国企業は、中国の豊富で安い労働力を目当てに、次々進出し、中国の労働力を食い物にしている。中国自身も、科学立国の道を歩もうとして、農村部や内陸部にまで工場が進出している。やがて、中国でも「もっと労働力を!」などというスローガンを掲げるかも知れない状況である。インドやアフリカなどもそれに追従するようになったら、もう救いはなくなる。
 人類に、グリーンアノールの末期症状を再現させないためには、一人一人が、『山猫とウサギ』のことわりを深く心に刻んでもらうほかあるまい。人間の命などどうでもいい、ということではない。人間の命が永遠に続くよう願うがゆえに,殖えすぎた人間の数をコントロールするすべを考えるべきであると思うのである。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 郷愁
もくじ  3kaku_s_L.png 源氏
もくじ  3kaku_s_L.png 源氏物語
  • 【源氏物語たより245】へ
  • 【多摩動物園に行く】へ
 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【源氏物語たより245】へ
  • 【多摩動物園に行く】へ