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郷愁

ああ、六本木

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   ああ、あこがれの六本木


 六本木ヒルズで、『フィリップスコレクション展』をやっていた時に、ルノアールの“舟上の昼食”だけはぜひ見たいと思って行ったことがある。
 地下鉄を乃木坂で降り、六本木ヒルズまで歩いたが、なんとない違和感を感じた。
「これが、六本木の一角であろうか」という感覚である。看板は勝手放題にでている、歩道にはゴミが舞っている、街全体が不統一でなんとなく不衛生でもある。
 六本木交差点をヒルズの方に曲がった時に、この感覚は一層強くなった。「これがいわゆる六本木通りなの?ひょっとすると道を間違ってしまったのではないだろうか」と思った。
 この通りはさらに不統一を極めていて、高速道路が通りのド真中の真上を走っている。その下の通りには間断なく車が流れていて、歩道すれすれに自動車が飛ばして行く。圧迫感さえ覚えて息苦しくなった。
ここが、若者が「六本木!六本木!」と騒ぐ六本木交差点なのだ。
 『NEWブルーガイド 東京』(実業之日本社)に、“待ち合せ”場所としてここが紹介されている。
 「六本木での待ち合せといえば六本木交差点のアマンド前があまりに有名。毎日夕暮れどきになると、ヤングたちでごった返している。」 
  妻とこっそり言ったものである。
 「我々は、二度と来るところではないな」
 六本木には、“星条旗通り”とか“テレビ朝日通り”とか、いい通りがあるようだが、少なくとも、六本木交差点周辺は、とても“待ち合せ”をするような所ではない。
 私などにとっては、結局、六本木は六本木ヒルズに尽きるような気がした。六本木ヒルズはさすがにたいしたもので、52階の展望台から眺めると、名だたる建物や公園が一望できる。皇居もここからだと小さく見える。妻にこっそり言った。
 「もう一度きてもいいかな」
 しかし、六本木ヒルズだけでは、若者たちをひきつける要素にはならない。彼らを魅了する何かが他にあるのだろうが、それが分からないままに帰りは、タクシーで六本木通りを通って渋谷に出た。タクシーは高速道路の下を走るばかりで、まったく見るべき景色もない。通りの周囲の店も、ごくありふれた店ばかりで、若者たちを惹きつけるようなものは一つも見あたらなかった。
 渋谷の“元祖くじらや”で昼食を取ることにした。“元祖くじらや”の前にタクシーが着いた時に、運転手さんが吐き捨てるように言った。
 「“がき”ばかりだ!」
 「昨夜は3、000人の若者が警察に補導された」
 確かに、彼が言うとおりぞろぞろぞろぞろ歩いているのは“がき”ばかりだ。 それにしても、渋谷や六本木を商売の場にしているタクシーの運転手が吐き捨てるように「ガキばかりだ」と渋い顔をする。
 渋谷も、不統一を極めた街だ。その雑然さ、乱雑さは世界に誇るべきものだ。街のいたるところを高速道路や高架鉄道が走っている。それらが街を分断してしまっているから、統一性を出せといっても無理だ。永遠に統一ある街にはならない。

 “元祖くじらや”は、客室が小さな部屋に区切られていて、私たちの入った部屋は道路よりもやや下の位置にある。だから、我々の目線が、通りを歩く人の足と同じ位置になる。奇妙な光景が妻には気になるらしい。
 「向こうからこちらが、見えちゃうんじゃないかしら」
 でも、通行人の目線はずっと上にあるので、こちらをのぞき込むような人はいない。逆に通りの景色がよく見えて、私には面白かった。
 私は、「これはいいチャンスだ」と思って、通りを行く人を観察し始めた。部屋の窓は、横幅3メートルほどであるが、その窓から見える人の群れは、一瞬たりとも途切れない。Bunkamuraの方に行く人、Bunkamuraの方からやって来る人。それも5人、10人とまとまって窓枠を流れていく。新宿や池袋も、いつも人であふれているが、渋谷の比ではない。その人出は異常なほどで、どこから湧いてきたのだろう。
 しかも、その8割以上が、確かに“がき”だ。時に年配者が通ると
 「あれ、あの歳でよく渋谷なんかに来るものだな」
と、感心してしまう。
 その“がき”も、ほとんどがカップルだ。
 六本木交差点も“待ち合せ”族で「ごったがえ」すというが、「なぜ逢引きにこんな雑踏を選ぶのだろうか」それが理解できない。すぐ近くに青山霊園があるじゃあないか。霊園なら静かで愛を語るには絶好の場所なのに。
 でも、若者たちは、どうもそういう静かな所は気に染まないようだ。彼らにとっては、人がごったがえしていないと気持ちが落ち着かないのかもしれない。
 「静かなところで逢引きを」などというフレーズは、とうの昔に古語になってしまったようだ。

 六本木で感じた「なにか他に若者を引き付ける要素があるのだろう」という疑問が、ここ渋谷にきて解けたような気がした。つまり、彼らには別に目的があるわけではないということだ。彼らの行動パターンは、「なにがあるから行く」とか「なにがないから行かない」ということとは次元が違うのだ。彼らは、ただ喧騒・雑踏を求めて彷徨(さまよ)っていることが目的なのだ。
 中学校のある歴史教科書(扶桑社)に、こんな記述があった。
 「自然と調和して生活した約1万年間の縄文時代には、日本人のおだやかな性格が生まれ、多様で柔軟な日本文化の基礎がつくられたという側面もある」
  いささか牽強付会(けんきょうふかい)な論であるが、それはともかく、「自然と調和した日本人の生活」という特色などは、渋谷や六本木では、もうまったくの夢幻(ゆめまぼろし)の世界である。“自然”の“し”も“調和”の“ち”の字もない。そういうものは、もう昭和の御代に消えてしまったようだ。

 ただ、心配なことは、きれいに整った街や静かな通りなどとは無縁で、ひたすら雑踏・喧騒を求めて彷徨するそういう現代日本人には、果たしてどういう性格が育まれていくのだろうか、ということである。少なくとも「柔軟で多様な文化」など育ちようがない。
 「日本人に縄文の生活を取り戻せ」とまでは言わないが、だからといって、新宿や池袋や渋谷や六本木が、このままでいいとは思えない。なんらかの手立てをしないと、日本という国と人間の興亡にまでかかわってしまう気がする。

 私は、ほんのちょっとした努力で、少しはましな街ができるものだ、といつも思っている。
 たとえば、広告を統一するだけで、街は一変する。今広告はあまりにも乱雑であり勝手放題である。美的センスのかけらもない。あの広告の規格を統一するのだ。それも可能な限り小さな広告板に統一する。できれば、色も統一するといい。色はアイボリーかダークグレーだ。
 ヨーロッパの街並みが、どこもかしこもみんな洗練されて見えるのは、広告にあると思っている。ヨーロッパでは広告がほとんど目に付かない。あれで店の位置がよく分かるものだ、市民が買い物などをする時に不便ではないのだろうか、と心配になるほどである。しかし、それでも立派に生活が成り立っている。案外それですむものなのだ。
 中国や東南アジアでは、自動車のクラクションがすさまじいと聞く。かつて日本もそうだった。ところが、今、日本でクラクションを聞くことはほとんどない。たまに聞くと「ぎょっ」とする。以前は鳴らさないと交通安全が図れないと思っていたのだが、今そうしなくても立派に交通安全が果たされるということが分かったので、誰も鳴らさなくなった。
 広告も同じだ。大きいからといってそれほど効果があるとは思えない。「他の店が大きな看板にするからうちも大きくする」程度でやっているに過ぎないのだ。
 新宿の歌舞伎町では、「街の浄化」に努力しているという。街の浄化に一番効果的なもの、それが広告の見直しである。立看板やビラビラと立っている広告用の旗もついでに撤去するといい。その跡にしゃれた植木でも植えてはどうだろう。

 それにもう一つ、すぐにもできそうなのが、騒音の解消である。渋谷ではどの店もどの店も音楽をがなりたてていた。どら声の呼び込みが充満していた。大騒音でがなりたてたからといって、それほど客を呼び込めるものでもあるまい。
 派手な広告を出さなくても、どら声を張り上げなくても、買い物をすね客はする。“元祖くじらや”の窓から通りを行く人の様子を見ていたら、ほとんどの人が買い物袋を持っていない。つまり、若者は“買い物”が目的で渋谷にきているのではない、ということである。 
新宿や池袋や渋谷が、あまり洗練されて静謐な街になってしまっては、若者にそっぽを向かれてしまうのではないかという心配も確かにないではない。しかし、今のまま放置しておいていいはずのものでもない。一晩に3、000人もの若者が補導されるようでは、いずれ、自然にそっぽを向かれるようになる。
 六本木が、「さすがに若者を引き付けるはずだ」と言われるように、また、新宿や池袋が、目的を持った若者が集うような街に変貌することを祈ってやまない。



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