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源氏物語

源氏物語たより291

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   再々度の哀しい紫上 『若菜』⑦ 源氏物語たより291

 「哀しい紫上」については何度文章にしてきたことだろう。その場面に至るたびに、つい感情移入してしまって、ここを文章化にして事を明らかにしておかなければ紫上に済まない、と思ってしまうのだ。源氏物語の主題は一つには定め難いものの、「紫上の哀しい宿命」こそその大きな一つであると私は確信している。

 女三宮が、光源氏の元に降嫁してきた。結婚三が日は何が何でも女のところに通わなければならないという定めがある。源氏は、紫上に気兼ねしつつも、女三宮の元に通って行く。女三宮は華やかにして生い先長い女性であるばかりか、侮りがたい内親王である。一夜でも夜がれすることなど許されることではない。それは朱雀院に対して申し訳の立たない行為になるからだ。
 しかし源氏は、一夜にして女三宮の人となりを見極めてしまっていた。
 「体は小さく、未熟で幼稚、まるで子供で、映えない人である。かつて十歳の紫上を引き取った時には、彼女は気は利いていたし相手のし甲斐もあったものを・・」
と悔いるのだが、今更通いを止めるわけにはいかない。

 一方、紫上にすれば、源氏がどう悔いていようが、女の元に通って行く源氏を目にすれば、平静ではいられず、将来への不安がよぎる。
 「いくら何でも、このまま女三宮さまに圧倒されてしまうこともあるまいが・・」
と自らを慰めるのだが、それでも面白くないことに変わりはない。こんなに長い源氏の夜がれなど経験したこともないし、衣を十分焚き染めて、女の元に通って行く源氏の姿を眺めていると、いくら我慢してもやはりものあはれを感じないではいられない。
 そんな紫上の様子を見ていると源氏は、思わず悔恨の情にかられる。  
 『などて、よろづのことありとも、また人をば並べて見るべきぞ。あだあだしく心弱くなりきにける我が怠りに、かかることも出でくるぞかし』
 「どうして紫上がいるというのに、それにまた新たに妻をもらう必要があったのか。これもみな浮気で心弱くなってしまった私自身の怠慢のせいだ」ということだが、ここでも源氏の身勝手さが姿を現す。

 この後の源氏と紫上とのやり取りが、哀しく可笑しい。源氏はこう言う。
 「今夜だけは定めということもあるので女三宮のところに行くことを許してほしい。今後あなたへの途絶えがあるとすれば、それは私の咎になるのだが、でも朱雀院への手前もあるし・・」
 これを聞いた紫上は
 『すこし微笑みて』
こう言う。
 「あなたご自身が、今後女三宮さまのところに通うのをどうするか決めかねているというのに、まして部外者である私がどうこうすることなどできるはずはないでしょ」
 この言葉で、源氏はさらに困惑してしまい、
 『頬杖つき給ひて、(物に)寄り臥し給』
うのである。そんな姿を見ながら、紫上は、硯を引き寄せて歌を書きすさぶ。
 『目に近くうつれば変はる世の中を 行く末遠く頼みけるかな』
 (目の前でこんなにも変わってしまうあなたとの仲だったというのに、その頼りないあなたに行く末遠く頼みをかけてしまった私でしたこと)
 なかなか女三宮のところに通って行こうとしない源氏を、「みっともないから早くいくよう」彼女はそそのかす。しかし、
 『(御召し物の)なよらかにをかしきほどに、(香の)えならず匂ひわたり給ふ』
源氏の姿を見ると。やはり心中ただではいられない。紫上のやるせない苦しみが内心に渦巻いていく。
 「これまでもひょっとするとこんなこともありはしないかと案じないではなかったが、源氏さまも最近ではすっかり落ち着いてしまわれて、まさかもう女のことで苦労するようなことはなかろうと思っていた矢先に、こんなに人聞きの悪いことが出てきてしまった。やはり今後とも安穏に過ごせる私ではないのだわ」

 紫上さまが悩んでいられる様子を見て、女房たちも落ち着かない。彼女らは
 「まあ、思いもしないことが出来してしまったこと。今まで、紫上さまがいらっしゃったおかげで、六条院もなだらかに過ぎてきたというのに。でもまさか、紫上さまが、このまま女三宮さまに屈しておしまいになるようなこともありますまい」
などと互いに噂し、ささやき合う。

 この後の経過については『源氏物語たより44』ですでに述べたところであるが、源氏物語中、彼女の哀しみが最も顕著に表れるところなので、あえて繰り返させてもらう。
 紫上は、女房たちのささやきごとを露も知らないふりをして、彼女たちと夜が更けるまで物語るのである。しかし、それではかえって女房たちの不安や不審を煽ることになるからと、床に入るのだが、
 『風うち吹きたる夜のけはひ、冷やかにして、ふとも寝入られ給はず』
なのである。しかも寝入れないことさえ気になってくる。女房がまた心配するかもしれないからである。彼女は身じろぐこともできず、心で輾転反側する。
 『夜深き鳥の声の聞こえたるも、ものあはれなり』
 彼女に何の責任があるというのだろうか。にもかかわらず、女房の反応をまで気遣って、身じろぐこともできないとは。
 先に「すこし微笑みて」とあったが、もちろん素直なほほえみではあるまい。彼女の頬はこわばっていたはずだ。そもそも、子供の頃はとにかく、彼女の「笑う姿」を今まで目にしたことがないのだ。この十年後、彼女は亡くなっていくが、笑いはもとより、打ち解けた安穏な姿さえ、ついに一度として見ることがない。


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