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郷愁

麗しきオンブバッタの交尾

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   麗しきオンブバッタの交尾


 我が家にオンブバッタが住みつくようになってからどれほどになるだろうか。春になるとどこからか湧き出るように姿を現わす。他所から入ってくる様子はない。毎年、我が家の敷地の中だけで近親結婚を繰り返しているにもかかわらず、滅びるということがない。オンブバッタの血というものはどうなっているのだろうか。
 またどこに卵を産み付けているのかも皆目わからない。冬になると鉢植えの野草は枯れてしまうので、みんな刈り取ってしまう。ところが、春になるとケシ粒のような幼虫がちゃんと生まれて出てくる。彼等は、本能で刈り取られてしまう植物を判断しそれには卵は産み付けないのか、あるいは軒下にでも卵を産み付けるのが習性なのか、よく分からない。
今年も20匹ほど生まれた。もっともケシ粒ほどの小ささだから、正確な数を数えることはできないのだが。
 それらも、時とともに数を減らしていってしまう。トカゲやヤモリやカマキリの餌食になってしまうのだ。トカゲやカマキリには申しわけないのだが、隣の大工さんの屋敷の草むらに追放処分にしている。トカゲなどは、昼日中屋敷中をちょろちょろ動き回って、目障りでたまらない。カマキリも、斧を振り上げて獲物に狙いを定めている姿を見ると、私までその犠牲になりそうな気がして、心が落ち着かないから追放してしまうのだ。ヤモリはどうして追放処分にしないのかといえば、可愛いからだ。それに一匹しかいないから、被害は少ないだろうと思っている。
 しかし、今年も20匹いたものが、どんどん数を減らしていって、ついに10匹になってしまった。何に食べられたのだろう。ヤモリではないだろうと信じている。なにせヤモリは夜しか行動しないので、彼の正確な生態は掴めない。
10匹のオンブバッタの内訳は、オスが8匹とメスが2匹というアンバランスな数である。これを《女日照り》と言い、江戸時代初期の江戸の町みたいなものである。

 ところで、なぜ私がオンブバッタに固執しているかといえば、その交尾の様子が麗しいからである。
 オスの体長は、メスの半分もない。体重たるや5分の1にも満たないほどの小ささである。その小さなオスが、メスの背中にちょこんと負んぶするのだから、微笑ましい限りで、とてもこれから性の宴が始まるとは想像できないほどである。とにかくその様子を見るだけでも心の慰めになる。
 背中に乗ったオスは、メスの肩の辺りに前足を掛け、体をメスの横腹の方にずるっとずらしていく。そして生殖器をメスの下腹部の方にぐっと伸ばす。すると、メスもこれに応えるように、自分の生殖器を斜め上方に持ち上げるや、あっという間に交尾は完成する。夫唱婦随というのか、なんとも麗しい光景で、羨ましい限りである。
 しかしこんなチャンスはめったに見られるものではない。とにかく素早いのだから。一日中オンブバッタの前に座り込んででもいないかぎり、こういう光景に行き当たることはない。かのフアーブルなどは、一日中虫を追っていたというが、ひょっとすると昆虫の交尾の様子に魅せられていたのかもしれない。それほどに麗しく微笑ましく神秘的なのである。
 もっとも、交尾中にもかかわらず、平気で草の葉を食んでいるメスもいる。あんな時にオスは背中に乗ってどう思っているのだろうか。
 今年は、我が家は江戸時代だから、オスばかりである。オスたちはメスの周りに屯して、日がな一日ぶらぶらしている。なぜかといえば、メスに先着したオスは、ひとたびその背中に乗ったが最後、絶対に下りようとしないからだ。恐らく関東大震災が起きたとしてもメスの背中にかじりついているだろう。交尾をしていない時でも下りようとしない。時には下りて交代すればいいのにと思ってしまう。あんなに大勢のオスが指を咥えて待っているのだから。この辺はあまり麗しいとは言い難い。

 ところが、今年、凄い場面を見てしまった。
 メスの背中に乗っていたオスの背後から、何も言わずにそっと忍び寄った別のオスが、その横に近付くや、前足でさかんに
 「どけ、どけ!」
とちょっかいを出し始めた。先着のオスは
 「やめろ、やめろ!」
と、メスの肩を掴んでいた前足を離し、蹴り返そうとする。
 と、後着のオスが、先着さんの後ろ足に噛み付くや、体を反るなり相手を後方に放り投げたのだ。まるでレスリングで言うところの《バックドロップ》だ。先着さんはナスの葉の上に放り投げられてしまい、何ごとが起こったものかと、茫然自失の顔をしている。
 竹内久美子(動物行動学者)が見たならば狂喜しそうなドラマが起こったのだ。竹内久美子によれば、いかなる生物も自己の遺伝子を残すためには、手段を選ばないと言う。これを《セルフィシュ・ジーン=利己的な遺伝子》というのだそうだが、まさにその事実を目の当たりにしてしまった。

 オンブバッタは、《負蝗虫》と書く。いつもメスに負んぶしていてるからついた名だ。
 オンブバッタは、体が長く流線型で触角はつんと突き出ていていかにも細々としている。体色はうすい緑色。体型といい触覚といい体色といい、草の葉そのものである。これでは、さすがのカマキリやトカゲもなかなか見つけることができないのではなかろうか。恐らく擬態であろう。擬態は、弱きものの必死の知恵である。
 擬態までして生きなければならない弱々しい存在、いつカマキリの鎌に命を落とすか、いつトカゲにぺろりとやられるか、彼らは生と死の間(はざま)を必死に生きている。
 しかし、自分の遺伝子を残そうとする時には、メスの背中にかじりついて決して下りようとしない執念深さを発揮する。また時にはレスリングの技を思わせるような荒事もいとわない大胆さも併せ持つ。
 そのようにして彼等は営々としてその生命を今に繋げて来たのだ。



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