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源氏物語

源氏物語たより304

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   奇妙な唐猫獲得作戦 『若菜下』① 源氏物語たより304

 唐猫のおかげで、思いもかけず女三宮の姿を垣間見ることができたのは、日頃から自分が宮を慕い続けてきた効験であると、柏木は自己中心にものを考えるのである。以来、彼は呆けたように宮のことが頭の中をかけめぐる。
 それでもふと正気になって考えてみれば、「たとえ表面的にせよ、光源氏さまは、宮さまをこの上ない北の方として丁重に扱っていられる。だからそのお方に心を掛ける」など、何とも
 『おほけなきこと』
とは思うのだ。「身分不相応なとんでもないこと」という意味である。しかも源氏を
 『け怖ろしく、まばゆく』
も覚えるのである。柏木にとっては、源氏は「そら恐ろしく、正視もできない」偉大な存在なのである。それなら止めればいいのだが、一旦心に焼き付いてしまった女性のことをそうやすやすと消し去ることなどできるものではない。それが「恋のあやなさ」なのである。理性と現実が乖離(かいり)するのが恋というものである。
 そこで、宮の乳母子である小侍従に、何とか二人の間(あいだ)を取り持つよう責めまくる。しかし小侍従にも小馬鹿にされるばかりで、状況は一向進展しない。

 彼は「それなら」と考える。「それなら偶然の垣間見を演出してくれた立役者・唐猫を、せめて自分の手元に」と考えるのである。
 猫を手に入れる前に、彼は、まず弘徽殿女御(柏木の妹)のところに行く。そこで、宮と同じ高貴さを持つ女御の雰囲気に浸って、心の鬱屈を晴らそうとしたのだ。ところが、女御は誠に慎み深く、こちらが恥ずかしくなるほどご立派で、兄妹といってもその姿を「ほの見せる」ことさえしない。それにつけても、女三宮の姿を見ることができたのは本当に奇跡であったと、彼は何の批判もなく自分に都合のいいように考えるのである。女御の姿を「ほの見る」こともできないのでは、彼の悶々たる思いなど晴らしようもない。

 そこでいよいよ唐猫獲得作戦に乗り出す。彼はまず、春宮のところに出かけて行く。春宮は、女三宮とは腹違いの姉弟で、そこには例の唐猫の兄弟が来ている。春宮は大の猫好きなのだ。柏木は、猫の話をして春宮の気を引くことから作戦を開始する。
 『六条院の姫君(女三宮)の御方に侍る猫こそ、いと見えぬやうなる(他では見たこともないような)顔して、をかしう(可愛く)侍りしか』
 すると、春宮は彼の話に食いついてきて、その猫のことを根掘り葉掘り問いただす。柏木はさらに春宮の心をそそるように語り聞かせる。
 『(六条院の)唐猫の、ここのに違えるさましてなむ侍りし。(猫はみな)おなじやうなるものなれど、心をかしく人馴れたるは、あやしうなつかしき(心惹かれる)ものになん侍る』
 猫好きの春宮にこれだけそそのかせば、必ず動くはずだ。案の定、春宮はさっそく明石女御のところに行ってこの話をし、明石女御を通して、六条院から例の唐猫を借り受けてくる。
 柏木は、数日して春宮のところに出かけた。もう唐猫は春宮のところに来ているはずだと読んだのだ。柏木を見た春宮は、こう言う。
 「確かにこの猫は可愛いが、うちの猫もそれほど見劣りするものではない」
 すると、柏木は間髪を入れず、
 「確かにこちらには、この猫よりも優れたのがいましょうから、それではしばらくこの猫は私が預からせていただきましょう」
と言って、まんまと手に入れてしまった。見事な作戦勝ちと言わざるを得ない。それにしても、これが、二十六歳(柏木)と十六歳(春宮)の男のやり取りなのだからあきれるしかない。ただ、柏木にすれば真剣そのものである。唐猫を手に入れられるかどうかは、恋の形代を手に入れ、少しでも心の慰めにすることができるかどうかの命運にかかわることなのだから。

 この後の柏木の「猫のかしづき(世話)」は、異常を通り越して、鬼気迫るものがある。春宮が猫を返すよういくら促しても、一向に応じようともせず、夜は猫をそばに臥せ、明けたてば猫のかしづきに暇なく、撫でまわして可愛がり育てるのである。猫も猫で、彼の愛撫に感応したのだろう、
  『ともすれば衣の裾にまつはれ、より臥しむつるる』
のだ。それを柏木は本心可愛いと思うのである。時には柏木が部屋の端の方にいると、寄って来て、
  『「ねう、ねう」といとらうたげに鳴』
くのである。彼はその声を聞いて、猫をかき抱き
 「女三宮に対する恋情が何とも昂ぶることであることよ」
とほくそ笑むのだ。彼は、猫の鳴き声の「ねう、ねう」を、「寝よう、寝よう」と聞いたのだ。もう狂気の沙汰というしかなく、鬼気迫るものと言ってもよいほどである。
 さすがにその姿を見て、女房たちは
  『あやしく、にはかなる猫の時めくかな。かやうなるもの、見入れ給はぬ御心に』
と咎めるのである。「時めく」とは、源氏物語の冒頭、「・・いとやんごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり」の「時めく」で「寵愛」ということである。女房たちは、「突然、猫が寵愛される」のをいぶかったのである。なにしろ彼は「日頃は猫などにまったく目もくれなかった」のだから。
 でもこれが恋というものかもしれない。理性では押さえられない激情なのであるから、人が狂気と見ようが「倒錯」と言おうが、本人は真剣であり、この時にはそれしか方法はないのである。
 これでは事が起こったとしても、怪しむに足りないのである。


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