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郷愁

犬の自尊心

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   犬の自尊心

 三崎の小網代の森の山路を歩いていたら、藪の中をチリチリと鈴を鳴らしながら歩いているものがあった。私の歩きに合わせて歩いているような気もする。こんな藪の中を人が歩くはずはない。
 「はて、なんだろう?」
 山路の倒木に座って音のする方をのぞいて見たが、ハッキリしない。
 と、突然藪から手足を泥だらけにした犬が飛び出して来て、私の顔をしげしげと眺めるや、私の手をぺろりとなめて、また藪の中に入っていった。猟師が連れてきた猟犬であろう。ポインターなどよりもやや小柄で毛がふさふさとしていて、毛の中から私をしげしげ眺めた小さな目が愛らしい。
 海側からの山路を、犬の連れの猟師がやって来た。私の手をぺろりとなめた様子を見ていたようだ。
 「すいません。人懐っこいもので」
 「ここは禁猟区ではないんですか?狙いはツグミですか・」
 「禁猟区ではありません。ツグミは今は撃ってはいけないのです。コジュケイを狙っているのですけどね、全然いません」 腕に《神奈川猟友会》というような腕章を巻いている。
 「キジバトですか?キジバトはいるんですがね。あれは狙いません。犬が追い出したものでないと撃ちません。犬は、自分に関係のないものを撃ったりしますとね、そのあとは主人の言うことを聞かなくなってしまいます。犬にもプライドというものがあるんですね。私の友達が一度それをやってしまったのですよ。すると彼の犬は全然言うことを聞かなくなってしまって、すっかりわがままになってしまいました」
 それにしても藪の中を一人で駆け回わらせておいていいのだろうか、それこそわがままな犬になってしまったり迷子になってしまったりするのではないだろうか。
 「うちの犬は、しょっちゅうここに来ていますからね。泥だらけになってもなんでも、藪の中を駆け回って獲物を探すの大好きなのです。私とはぐれてしまっても大丈夫です。自動車のところでちゃんと待っていますから」
 彼らと別れて小網代湾のところまで歩いて行ったが、一度も猟銃の音はしなかった。あのワンちゃん、藪の中をチリチリと鈴を鳴らして、コジュケイを追い出すことが出来ずにひたすら駆け回っていて、時折山路に出てきて、見知らぬ人の手をぺロリと舐めたりしているのだろう。
 波一つない小網代湾でおむすびを食べ、さて出かけようかと思った時、先ほどの森の方から
 「ババーン、ババ―ン」
という猟銃の音が二度連続して響いてきた。獲物がようやく見つかったようである。ワンちゃんの嬉しそうな顔が見える。

 犬は頭の良い動物であることは、いろいろ聞いている。きちんと仕込めばそれなりのことはちゃんと出来るようになることも聞いている。イギリスの犬は公園などでは吼えないと聞いたことがある。紳士の国だから、犬もその紳士に育てられているからだという。日本の犬も最近は随分紳士になって、公園などで醜くギャンギャン吼えるのを見なくなった。家庭教育が徹底してきた結果であろう。
 猫などに比べれば、どんなに良いか。夜中に不快な声を出して「ギャアギャア」、「ゴロゴロ」鳴く猫には、閉口する。あれを《猫の恋》などと言った風流人を疑問に思う。にもかかわらず、古来多くの俳人が猫の恋を詠っている。
 《猫の恋やむとき閨の朧月》      松尾芭蕉
 《恋猫の皿舐めてすぐ鳴きにゆく》   加藤楸邨
 とても《閨の朧月》などというものではない。楸邨の歌が当たっている。その季節には「赤ん坊の泣くような声を上げて歩き回る。ろくに食事も摂らず幾日もさまよい歩き、やつれ果てて帰って来ることがある」(読本・俳句歳時記 産調出版)とある。猫にはプライドも何もあったものではない。
 最近の犬は、可愛いいのが多くしかもやたらと吠えないので、それほど犬好きでもない私でも、思わず声をかけてみたくなることがある。しかし、それはプライドがあるかどうかとは関係ないことである。手足を泥だらけにして、見知らぬ人の手をペロリと舐めるような、あんなチリチリ犬に、本当にプライドがあるのだろうか。未だに疑問に思っている。
 


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