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源氏物語

源氏物語たより306

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   柏木と小侍従のおかしな攻防  『若菜下』②  源氏物語たより306

 柏木は、蹴鞠の日に垣間見た女三宮の面影が心から離れない。垣間見の機会を作ってくれた唐猫を手元に引き取り、昼となく夜となく唐猫を傍らから離さず、猫が「ねう、ねう」と鳴くと、「寝よう、寝よう」と聞こえるほどのあくがれ(魂が肉体から離れ、外に彷徨い出ること)よう。
 あれから六年、この間、柏木は相変わらず宮のことを忘れることができないでいた。宮の女房である小侍従を仲介に、逢瀬の機会を作るよう責め続けていたようである。
 ところで、この小侍従は、母が女三宮の乳母であり、また、母の姉が柏木の乳母なので、小さい時から柏木のところに出入りしていて、非常に親しい間柄であった。そのために宮の情報は、小侍従を通して逐次柏木に伝えられていたのである。

 さて、紫上は、女樂の後、急に重い病に倒れた。その後も病は一向に良くならないので、転地療養の試みとして二条院に移った。源氏を始め多くの女房が、介抱のために二条院に付き従って行ったので、六条院はすっかり人少なになり、火が消えたような状況になってしまった。
 このチャンスを逃す柏木ではない。早速小侍従を呼び出し、こう責める。
 「私は、昔からずっと女三宮さまを思い続けてきた。もう辛くて命も絶えてしまいそうだ。今までお前という良きよすがを頼りにしてきたのに、その験も一向にない。
 光源氏さまは、紫上さまだけを大事にされ、宮さまは一人寝の夜ばかりというではないか。宮さまの父・朱雀院はそれを大層心配していられて、いっそのこともっと心安い後見を選べばよかったと後悔していられるそうだ。
 私は、宮さまの姉・女二宮を手に入れたが、同じ姉妹でも“それはそれ”でしかない。私の本命はあくまで女三宮さまなのだから、なんとかしてくれないものか」
 これを聞いた小侍従、呆れてしまって激しく反論する。

 (ここから二人の滑稽にして真剣なやり取りが始まる)小侍従は言う。
 「まあ、なんて畏れ多いことを。女二宮さまをほったらかしにしておいて、とてつもない欲深いことをおっしゃる」
 「それはそうかもしれないがな、宮さまの婿選びの時には、私も手を上げた一人だ。そのことは院も帝も御承知のこと。それに何かの機会に、院は“どうして柏木を婿にしなかったのか”ともおしゃっていられたのだ。あの時お前がもう少し骨折ってくれていればそうなっていたかもしれないのだぞ」
 (小侍従が骨折ったとしても事態はどう変わるわけでもあるまいのに。柏木は妙なことを言いだしたものである)
 「そんなこと、とても無理よ。まったく法外な高望みをされるんだから。人には宿世というものがあるのですよ。そもそもあなたは、光源氏さまに太刀打ちできる人物だと思っていらっしゃるのですか。最近やっと衣の色も濃くなってきたにはきたけどね」
 (「衣の色が濃くなる」とは、位が高くなるということ)
 柏木、相手の口ごわさに脱帽してしまって、思いの限りを言うこともできない。そこで、
 「分かった、分かった。昔のことは言うまい。ただこのような人少ななチャンスなどめったにないのだ。私の思いの一端でもいいから、宮さまのおそばで申し上げたい。その機会を作ってくれ。頼む。別にそれ以上のやましい気持ちなどない。そんな畏れ多いことは一切考えてはいないのだから」
  「これ以上“畏れ多いこと”などありはしないわ。もう聞いているだけで気持ちが悪くなってしまう。こんなところにのこのこ、何しに来たのかしら」
と彼女は
  『はちぶく』
のである。(「呆れ果てて口を尖らせて文句を言う」という意味である)。
  「なんと聞きづらいことをずけずけと。そもそもお前はものごとを大袈裟に言い過ぎる。世の中はな、定めなきものなのだぞ。女御・妃だって事情によっては男とこっそりということもある。ましてあの女三宮さまは、源氏さまから疎外されているのだ。宮さまにそんな思い(浮ついた思い)がないとは言えないだろう。
 世の中は常なきものなのに、お前は杓子定規に考えるばかりだ。ものごとをこうと決めきってしまって、味もそっけもない、情けないことばかり言う」
  (「世の中は常なきもの」と二度も繰り返している。どうやら柏木の思考はあらぬ方向にまで向き出したようである。つまり「世の中は常ない」という思考の裏には、源氏の出家や崩御のこともあるのではなかろうかということである)
 「でもね、今更、結構な方(柏木のこと これ皮肉)のところに、女三宮さまが再婚などなされるとお思い?
それに院が、婿を源氏さまにお決めになられたのは、源氏さまが親代わりもできるこの上ない後見だとお考えになられたからよ。あなたに親代わりなどお出来?
 もう、本当に面白くもないことばかりおっしゃって。相手を悪く言われる」
と、ついには、小侍従、腹を立ててしまった。
 「もちろん私のような人数にも入らない人間を、宮さまが心を割って会って下さるなどとは思いもしないよ。ただ、一言でいいから、物越しに話しをさせていただくくらい、お前さんにとって何の迷惑にもなるまいに。
 『神・仏にも、思ふこと申すは、罪あるわざかは』」
 (これは随分論理が飛躍してしまったものである。確かに神・仏には、誰でもなんでも願い事を申し述べることは自由だ。しかし、女三宮と神・仏とはまったく事情が違う。柏木自身、自分を見失ってしまったようだ。
 でも神や仏まで持ち出してしまったのも、なんとか相手を説き伏せようという一途の思いからなのだろう。それにしても、彼の思考は、神や仏にはいい迷惑だし、源氏や女三宮に対しては誠に畏れ多いものである)。

 (小侍従は、この論理の飛躍について行けなくなってしまったこともあるのだろう、「命に代えて」と懇願する柏木の熱意に押されてしまって、ついにこう言って激しい攻防の幕を閉じる)。  
 『もしさりぬべきひまあらば、たばかりはべらん。院のおはしまさぬ夜は、御帳のめぐりに人多くさぶらうて、御座のほとりにさるべき人、かならずさぶらひ給へば、いかなる折をか。ひまを見つけ侍らん』
 (そして、彼女は誠にこの夜しかないという「ひま」を見つけ出し、柏木を宮のところに導くのである。
 この小侍従を「もの深からぬわか人」と語り手は言っているが、まさに思慮の足りない若さが、将来ある二人(柏木と女三宮)の人生を暗転させてしまうのである。しかし、この小侍従を誰が責めることができようか)。



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