源氏物語

源氏物語たより337

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    源氏物語を十六回読み終って  源氏物語たより337

 源氏物語の原文読みの十六回目が、今日(2014年8月19日)終わった。十五回目が昨年の九月だから、概ね一年間かかったということになる。初めの頃は一年で三回ものスピードで読んでいたが、最近は読みの速度が落ちている。それはあちらこちらで引っかかっているからだ。他の部分との関連を考えたり物語の筋の必然性や矛盾を追ったりしているからで、いわば読みがはるかに深くなっていることを表わしている。また、「源氏物語たより」の話題探しやその構想にも時間をかけているので、自然読みの速度は落ちてしまう。
 今振り返ってみても不思議な気がする。「古文」などというものから何十年も離れていて突然読み始めた。古語も分かりはしないし、有職故実も分からないまま読みだしたのだから、随分無謀な仕儀といえる。初めの頃(五回目ころまで)は全く意味も取れないまま読んでいた。とにかく最後まで到達してやれと言う意気込みだけであった。意味が分からないまま読むというのはまことに苦痛なことである。突然言葉のわからない国に放り出されたようなものだ。それでも読み進めていった自分の忍耐力には感心する。これを「われぼめ」というのだが、何かに取りつかれた執念のようなものが私を支配していたと言ったらいいかもしれない。これを「物の怪」という。
 それでも止めなかったのは、分からないながらも、そこここに面白さがあって、それがなんとなく心の底に伝わって来たからだろう。そしてやがて「とにかくこの物語は、凄い!」「この作者は何という女であろう!」という感動が私を突き動かし始めた。そうなるともうやめられない。そして、何とかしてこの感動を人とともに分かち合いたいという思いが「源氏物語を読む会」となり、『源氏物語たより』を書き始めることになったのだ。
 初めの頃は、あまりにも長編である『若菜上・下』(全編の一割を占める)や光源氏のいない源氏物語などクリープを入れないコーヒのようなものだと思って「宇治十帖」などは敬遠して飛ばして読んでいた。また、和歌も本当に分からなかった、それで「和歌」と言うのか、それでは仕方がないなどと言って無視して読んでいた。
 しかし、古文に慣れ、源氏に馴れるにしたがって、『若菜上・下』や「宇治十帖」や「和歌」を抜いた源氏物語などは「クリープを入れないコーヒのようなものだ」と思うようになった。
 源氏物語学者の鈴木日出男氏は、「源氏物語を読んできてこのあたり(『御法』の巻)にくると自然と涙が出てきてしまう」と書いておられるそうだ(小学館『源氏物語を読み解く』より)が、私もそうだ。『御法』の巻では紫上の哀しみが身に沁みて感じられ、涙で袖が濡れる。
 源氏物語を十六回も読むという無謀な仕儀も、そのように感情移入させられるところが限りなくあったからだろう。
 それに、処々にちりばめられた滑稽やセンスあふれる言葉遊び、精緻な心情描写や四季・自然の美しさと人事との絡み、それに何よりも綿密に構成されつくした筋(伏線の巧みさ)・・これらは、今まで触れてきたいずれの小説にもなかったものだ。
 これから後、私は、何回この源氏物語を読んでいくことだろう。
 
 それではここで改めて、私が、極めて面白いと思っている巻々を上げておこう。
  『夕顔、若紫、葵、賢木、蓬生、松風、乙女、野分、玉蔓、真木柱、若菜上・下、御法、幻、橋姫、東屋、浮舟、手習』

 今後も『源氏物語たより』は続けていくつもりだが、同時に『源氏物語玉手箱』と題して、比較的短い文も書いて行こうと思っている。原文を読んでいく折々に「お!」と感じたことをメモのように綴ってみるつもりだ。
 玉手箱には、「秘密にして容易には他人に明かさない大切なもの(広辞苑)」が入っているという。源氏物語自身がもう玉手箱のようなもので、毛頭「秘密」にする必要などはないのだから、小さなことでもなにかきらりと輝くものを探し出したら、すぐにメモし、それをできるだけ多くの人とともに味わっていきたいと思っている。
 ただ、浦島太郎の玉手箱のように、「あぢきない」煙になってしまわないよう、さらに読みを深めていくつもりだ。なお、『源氏物語玉手箱』では、今まで『源氏物語たより』ですでに述べたことも再掲することになるかもしれないが、それを恐れず、源氏物語の魅力・価値を改めて確認する意味で、綴っていこうと思っている。


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