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源氏物語

源氏物語たより380

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   俵万智の竹内久美子理論の引用について  源氏物語たより380

 俵万智の『愛する源氏物語 (文春文庫)』を読んでいてびっくりした。なんと、かつて私が傾倒した竹内久美子の理論で、光源氏の人となりを解釈しようとしているではないか。竹内久美子は、京都大学理学部卒の動物行動学者で、今から二十数年前、ベストセラーになった『そんなバカな! (文芸春秋)』の著者である。非常に画期的な理論で、動物や人間の性(遺伝子)の在り方を分かりやすく、しかも実に面白く説いた人である。私もあまりに突飛な話の連続に呆れもし、また感動しもして、その後に出た彼女の本はすべて買って読んだほどである。
 俵万智が、どういう面で、竹内久美子理論を引用したかというと、光源氏の性についてである。源氏はあれほど多くの女と関係を持ちながら、子供が極めて少ないことに疑問を持ったのだ。実はこの疑問は私も感じる所で、かつて
 「源氏は性的には極めて弱い男ではなかったのではないか」
という文章を書いたことがあるほどだ。恐らく誰もが感じる疑問ではなかろうか。源氏には、葵上との間の夕霧と明石君との間の明石姫君しかいない。冷泉帝は源氏の実子であるかどうかは微妙である。いずれにしても、なぜ世紀の色好みに二人の子どもしかできなかったのだろうか。
 
 俵万智が引用した竹内久美子理論とはこうだ。
 「動物は自分の遺伝子を残すために,熾烈な戦いを繰り広げている。そして時と場合によって、同じ人の精子でも、その数や活発さが異なる。長い時間一緒にいればいるほど精子の数は減り、逆に共有時間が短いと、精子の数は明らかに増える。つまり、女性をよく見張ることができ浮気の可能性が少ないとなると、精子は少なめになり、自分以外の男性と過ごした可能性があると感じた場合には、たくさんの精子を出して対抗する」 
 俵万智は、この理論から源氏の子の少なさや彼の性の特性を解釈しようとするのだ。
 「源氏がいつも手元に置いている紫上と、帝に愛されている藤壺とでは、状況は対照的だ。光源氏の正妻と目されている紫上に言い寄る男などいない。紫上は浮気の心配のない女性である。一方、藤壺は、いつ会えるかも分からぬ間柄で、もちろん「前回の性交からのパートナーとの共有時間の割合」も極端に少ない。というわけで、藤壺との性交の時は、精子も多く出るし、その精子も活発である。したがって、たった二回の性交で子ができてしまった。
 明石君との関係も同じで、明石君の親が許した仲とはいえ、紫上や供人に気兼ねして、実際にはあまり会う機会がなかった。そのためにたまに会う時には、精子が・・ということで、たった一年ほどで子ができてしまったのである。逢瀬の少ない順で言えば、藤壺、明石君、紫上ということになり、この順で妊娠する可能性が高い(少なくとも精子が元気)ということは言えそうである」

 竹内久美子理論は、今でも私は十分何の疑いもなく肯首できる。例えば浮気のように逢う機会が少ない女性であったり、危険を伴ったりする逢瀬の時には、男はより一層頑張るだろうから、精子も多いし元気だ。間違いはない。
 ところがそれをすぐ源氏に当てはめてしまっていいかとなると問題である。事実俵万智は詭弁を弄しているのだ。何回か源氏物語を読んでいる人には、その誤魔化しはすぐ気付くはずだ。それは肝心な朧月夜が抜けていることである。源氏の性を語るに、朧月夜は欠かせない存在である。彼女との最初の出会いなどは、実にドラマチックで、彼の精子はさぞ狂奔したことであろう。まして、朧月夜が朱雀帝の妃(尚侍)になってしまった以降は、簡単には会えないわけだ。それでも、二人は実事を繰りかえしているのだが、特に帝が五壇の修法で身を縛られているすきを窺っての密会などは、いかにスリルに満ちものであったか、想像するだにぞくっりとする。しかも朧月夜という女は、官能的で奔放であった。本文にはこうある。
 『女の御様のげにぞめでたき御盛りなる』
 『をかしうなまめき若びたる心地して』
 そんな女との久しぶりの逢瀬である。
 『まして珍しきほどにのみある(源氏との)御対面の、いかでかはおろかならん』
というわけである。この密会の時などは、源氏の精子は、暴れ回わって飛び跳ねて収拾がつかないほどであったはずだ。にもかかわらず彼女との間にはついに子供はできなかった。この事実を俵万智はどう釈明しようというのだろう。もっとも朧月夜は朱雀帝との間にも子ができなかった。紫上と並んでうまず女であった可能性もある。葵上とのなかに十年も子ができなかったことも考慮しなければいけないのだが、これは若い時の源氏が、藤壷を恋焦がれていてほとんど床を共にしなかったことと関係するのだろうから、この三者は、竹内久美子理論の外にあるというしかないであろう。

 では、女三宮とはどう考えたらよいだろうか。二人は正式な夫婦でありいつでも会える関係である。つまり竹内久美子理論からすれば、夜毎床を共にすることができるのだから、源氏の精子は少なかっただろうし元気もなかったと言える。二人には子供ができにくい状況あったということである。事実二人の間に子供はできていない。
 その間隙をぬって、柏木が忍びこんできた。柏木にとっては、女三宮はめったに会える女性ではない。ところが奇跡にも似た逢瀬を持てたわけである。翌朝、女三宮のところを出て行きながら、彼は
 『魂は誠に身を離れて(女三宮のところに)とまりぬる心地』
さえしているのである。昨夜の実事がいかに激しいものであったか、言うまでもあるまい。そのハッスルのお陰ですぐ子供ができてしまった。これは竹内久美子理論に見事に当てはまる事例である。
 ただ、「源氏との間にはできずに・・」というのは、必ずしも当を得たものではない。なぜなら、女三宮が源氏に輿入れした時には、彼は四十歳で、当時のこの歳は今で言えば初老である。柏木と女三宮の過ちがあった時には、四十七歳である。性に対しては相当淡泊になっていただろうし、精子の数も激減していたはずである。
 それに何よりも源氏は、女三宮を好いていないどころか、むしろ侮っていたのだ。そんな女との実事では、身が入いるはずはない。このことも考慮しておかなければならないことである。
 竹内久美子理論の元になっているのは、イギリスの生物学者二人が行った世にも不思議な実験の成果である。その時の被験者は、大学生や三十代の若い職員など男・女二十数組だ。初老はいない。

 源氏には、中将の君ほか大勢の召人(めしうど)がいた。ところがそれらの女性との間に子供ができたなどという話はとんと聞かない。やはり、源氏は性的には弱い男であったという私の理論が正しい解釈であろう。あるいは彼は性に対しては元々淡泊だったのかもしれない。なぜなら実事を欲すればいつでも可能な身分、立場だったわけで、我々のように貧困ではなかった。彼の女性との交接の目的は、子供を造ることや実事そのものではなく、「あはれ」を探求することだったのだ。彼にとって性は二の次である。源氏という男は、そもそも竹内久美子理論には当てはまらない超人間なのである。
 でも彼女の理論のある部分は、源氏物語の解釈に役立つところがあるかもしれない。その面で俵万智が、何年振りかで、竹内久美子に私の目を向けさせてくれたことを感謝しなければなるまい。

 とにかく、竹内久美子の『そんなバカな!』や『三人目の子にご注意!(文芸春秋)』をお読みになることをお勧めする。
伝書鳩(オス)を、早く目的を果たして帰還させるためには、出発する前に、その鳩の連れ合い(メス)に別のオスと仲良くさせておけばいい、そうすれば連れ合いが間違いを起こすのではないかと心配して急いで戻ってくる、という話とか、オシドリは、別に仲が良くていつもぴったり寄り添っているわけではない、連れ合いを別のオスに奪われることを警戒してガードを固めているだけである、という話など、目からうろこが満載、抱腹絶倒の話ばかりである。


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