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源氏物語

源氏物語たより385

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   兵部卿宮の行動が理解できない  源氏物語たより385

 光源氏が、紫上を二条院に拉致同然に連れていってしまった翌朝、紫上の父親である兵部卿宮(以下 宮)が、彼女を連れにやってきた。もちろんそこには紫上の姿はない。
 連れに行った自分の娘がいなくなったというのだから、驚き慌てて、大騒ぎをして探し回るかと思ったのに、そうしなかった。この時の宮の行動がなんとも不思議であり、現代人にはとても理解できないのである。

 この宮には北の方(正妻)がいる。それ以外にも何人かの妻がいるのだろうが、その一人に紫上の母親がいた。この母親は、紫上が小さい時に亡くなってしまって、その段階で、彼女が頼れるのは祖母しかいなくなった。したがって、宮は紫上を引き取ってしかるべきだったのである。しかし、以前から紫上の母親も祖母も、宮の北の方を嫌っていたことがあって、結局祖母が育てていくことになった。
 その祖母さえ亡くなってしまったのだ。紫上は天涯孤独の身で、当然、宮はなにをおいても娘を引き取らなければならない義務が生じた。ところが、「祖母の四十九日が済むまでは」などと言って、放っておいた。これさえ信じられないことで、今なら育児放棄で罰せられるところである。

 女房たちは、昨夜神出鬼没の如く源氏が紫上を拉致していったことを知っているのだが、口止めをされていることもあって、宮に真実を語るわけにはいかない。そこで
 「乳母が、姫をどこか知らないところに連れていって隠してしまった」
と嘘を付く。この時の宮の反応が誠に信じられないのだ。彼は、
 「そういえば、彼女の祖母も、生前から北の方の所に移ることを嫌がっていたし、乳母がその気持ちを察して、自分勝手な判断でどこかに連れて行ってしまったのだろう」
と思うだけで、いとも簡単に女房たちの嘘を信じてしまうのである。それでも人目を憚ってでもあろうか、
  『泣く泣く帰』
って行くのである。
 その後、彼は、紫上の祖母の兄である僧都に、娘の所在を聞いただけで、「何の手がかりもありはしない」と言って、探すことを断念してしまう。そのくせ娘を「恋しく悲し」と思うのである。
 こんな親子関係があっていいものだろうか。まるで嫌っていた娘がいなくなってほっとしたという気持ちになっているかのようである。でも決して紫上を嫌っているわけではないのである。たとえ体面上にせよ、「泣く泣く」帰って行ったのだし、娘のことを「恋しく悲し」と思っているのだ。捨てられた子供とすれば、恨めしい限りであろう。

 ただ、兵部卿宮のために弁護するとすれば、当時の一夫多妻のシステムがそうさせたともいえなくはない。嫡妻(北の方 正妻)の子であるかどうかで、子供の扱いは全く変わってしまう。北の方以外の子が、その家に引き取られるようになれば、いじめの対象になる。当時はやりのいわゆる「継子物語」である。『落窪物語』の落窪姫などは、紫上と同じような境遇を辿っているのだが、継母に預けられて、信じられないようないじめを受けている。
 宮の北の方は、性格が激しそうであるし、ひがみ根性は強い。恐らくこの北の方は自分の娘ばかりを可愛がって、紫上を疎外し、相当いじめることになったであろう。それを宮が慮(おもんぱか)って、真剣に探そうとしなかった、という理屈である。当時このような例は稀ではなかったのかもしれない。

 それにしても宮は、実に貴重な玉を手放してしまったものだ。なぜなら、十歳とはいえ、紫上は傑出した資質の持ち主だったからである。なにしろ北山で、源氏が一目見るなり、その将来性を見極めたほどなのだから。
 『あまた見えつる子どもに似るべうもあらず。いみじく生ひ先見えて、美しげなるかたちなり』
 その後も彼女は理想的な女性として育っていき、あの源氏が生涯愛し続けたのである。いかに稀有な女性であったことか。実の親である宮が、その将来性に気づかなかったはずはない。あの朝も宮は
 『あたらしかりし(めったにないほどの)御かたちなど、恋しく悲し』
と見ながら泣き泣き帰ったのである。
 そんな紫上をもし宮が引き取っていれば、将来かけがいのない持ち駒になっていたはずである。つまり、帝か東宮に入内させるための持ち駒ということである。そして、もし紫上に皇子でも生まれれば、宮には摂政の芽も出てきたはずである。あたら掌中の珠を逃してしまった。

 彼女にそういう運命を辿る道がなかったわけではない。ところが源氏が「拉致」してしまった。親や家の許しのない結婚は「野合」でしかない。まして「拉致」など、犯罪まがいの結婚である。このハンデが彼女の生涯に大きな枷(かせ)となっていく。そして、その枷が彼女の哀しい人生を組み立ててしまうのである。
 そんなことを思うと、あの時、なぜもっと真剣に宮が娘を探さなかったのか、などと紫上のためにあらぬことまで考えてしまうのである。


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