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源氏物語

源氏物語たより534

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     褒めすぎではないか   源氏物語たより534

  何につけても光源氏を褒めるのが、この物語の特徴である。とにかく、どんな衣装を着てもたぐいまれな美しさになるし、どんなにうち解けた姿でいても「さま良く」見えてしまう。また何をしてもこの上ない才能を発揮するし、何を言っても人の心を打ってしまう。時には鏡を見て『我ながらいとあてに清ら』などと我褒めまでさせている。
  いささか褒めすぎではないのかと鼻に付き、辟易させられることがないでもない。特に現代の冷静な読者は、「だから光源氏と言う男には馴染めないのだ」などという感想を持つようになるのだ。「褒めすぎ」が、源氏物語を遠ざける要素と言えなくもない。
  しかしこれも仕方のないことなのである。何しろ光源氏はこの物語のヒーロで、当時の読者である姫君たちにとっては、彼は、憧れの的であり、称賛の対象であり、理想の男性なのであるから。そんな男性が、野暮であったり人に負けたり失敗をしたり粗野な行動を取ったりなどということは許されないことだったのだ。
 
  『初音』の巻で、源氏は、初春の挨拶にと、六条院や二条東院の女性方を回って歩く。一渡り回った後で、源氏はどの女性をも身分身分につけて「あはれ」と思うのである。この「あはれ」は、どの女性もみな「愛しい」あるいは「特別優れている」という意味であろう。そんな源氏を作者はこう評価する。
  『「われは」と思し上がりぬべき御身の程なれど、さしもことごとしくもてなし給はず、ところにつけ、人のほどにつけつゝ、あまねくなつかしくおはしませば、ただ、かばかりの御心にかゝりてなむ、多くの人々、年月を経ける』
  前半の「・・さしもことごとしくもてなし給はず」までの評価は、確かに作者のおっしゃるとおりである。この時、源氏は太政大臣という天下人である。にもかかわらず、彼は権勢を傘に着て、横柄に振る舞ったり理不尽な行動を取ったりはしない。
  須磨に流れて行った時も「罪無くして」とか「横ざまの罪を受けて」とか何度も繰り返しているから、京を離れなければならないことが、腸(はらわた)が煮えくり返るほど悔しかったはずだ。だから、そういう境遇に彼を追いやった者たちへの恨みは骨髄であったことだろう。ところが帰京して権勢を回復した後、そういう人たちへの報復が熾烈を極めたかと言えば、そんなことはまったくない。  それは彼の天性の性格であり生まれ育ちの良さなのかもしれない。
 
  ところが、それ以降の評価となると「ん?」と思わざるを得ない。本当に彼は「場所に応じ、身分にしたがって、あまねく優しい」人柄であると言えるだろうか。どうも疑わしい。特に、初春のあいさつ回りの時の、空蝉と末摘花に対する彼の言動は、褒められたものではない。
  六条院とは離れて二条東院に住む二人の所には、正月の騒がしい頃を過ごしてから年賀に出かける。
  ところが、彼が、末摘花の所へ年賀に行くのは、義理であり面目上に過ぎないのだ。何しろ末摘花は、故常陸宮様の歴(れっき)とした姫君であるから、そんな姫君を放っておいたのでは世間が許さないだろうという憶測から、仕方なしに訪問しているだけなのである。
  訪れて、まず彼の目に飛び込んできたのは、彼女の髪であった。あの醜悪な容貌の末摘花にも、唯一の美点があった。それはふさふさとした身の丈に余るほどの長い髪である。ところが今は、
  『盛りと見えし御若髪も、年ごろに衰へゆき、まして滝のよどみ恥づかしげなる』
状態に様変わりしていた。「滝のよどみ」とは、真っ白になって流れ落ちる滝の上の水のことを言っている。古今集の次の歌から取っている。
  『落ちたぎつ滝の水上(みなかみ)年積もり 老いにけらしな 黒き筋なし』
  「滝の水上(湖など)はすっかり年老いてしまったのだな。なぜって、流れ落ちる滝は真っ白で、黒い筋など全くないのだもの」という意味で、末摘花の髪は、その滝さえ恥ずかしがるほどに真っ白くなってしまっていると言っているのである。なんという侮辱であろうか。髪がだめなら、もう彼女には一つとして取柄はなくなってしまった。
  この後も徹底して彼女の「醜悪さ」を暴露していく。彼が贈った着物の着こなし方の醜さ、霞にも紛れることのない華やかに赤い鼻の先端、などなど。見るに耐えられなくなった源氏は、
  『ことさらに几帳ひきつくろひ、隔て給ふ』
のである。わざと几帳を動かし、彼女の姿が見えないようにしたというのだ。源氏は何のために初春の歓びを言いに来たのだろうか。

  空蝉は、夫の死後、家族の者から冷遇され、あるいは卑しめられて、世をはかなんで出家してしまう。それを心長い源氏が二条東院に引き取っていた。彼女を訪れると仏道勤行に明け暮れる様子は
  『をかしげに、なまめかしく』
さすがに末摘花とは違って、人柄が優れていると源氏は感じ取るのである。ところが、語るにつれて愚痴っぽくなり嫌味がましき言葉が出てきてしまう。
  「以前、私を拒否し続けたことを、あなたは仏様に懺悔しているのでは」
  「私のように素直な男は、この世にいないとお分かりになりましたか」
などと。後者の「私のように素直な男」とは、空蝉が、夫の死後、その子供(空蝉の継子)に懸想されるという醜聞をそれとなく暗示しているのだ。彼女はそんなことまで知っている源氏に対して、「恥ずかしい」思いを余儀なくされる。初春からどうしてこんなに女性を辱めなければならないのだろう。
 
  これでも「あまねくなつかしくおはしませば」と言えるのだろうか。「なつかし」とは、人の心を惹きつける優しさという意味である。

  さて、先に上げた褒め言葉の最後の部分を検証してみよう。
   『ただかばかりの御心にかゝりてなむ、多くの人々、年月を経ける』
とはどういうことであろうか。「源氏のこのようなお情けにすがって、多くの人たちが年月を過ごしている」という意味なのだが。
  源氏が、六条院や二条東院で世話している女性たちは、明石君を除けばみな没落貴族である。紫上さえ、父に捨てられ、母も祖母もいない完全な孤児である。末摘花などはその典型で、宮家の成れの果てである。空蝉は家柄は良かったのだが、こと志と違って、受領の妻に落ちてしまった。花散里は、父親は大臣であり、姉は桐壷帝の女御という歴とした家柄であったが、後ろ盾をなくしてしまったのだろう、完全に没落してしまって、源氏の庇護がなければ生活が成り立たないほどの不如意な状態にある。
 
  それでは、これらの女性と源氏はどういうなれ初めであったか、改めて振り返ってみよう。
  紫上は、北山で垣間見した時に、その利発そうな様子と藤壺宮似であることに一気に魅かれて、拉致同然に二条院に連れてきた十歳の少女であった。未成年者拉致誘拐罪適用である。空蝉は、伊予介の妻と知りつつ部屋に押し入り、強引に犯してしまった女性で、これは強姦および姦通罪。末摘花は、何の罪と言ったらいいだろうか、とにかく何の用意もなくもぞもぞしていたら、突然源氏に契られてしまった。不同意媾合罪?。花散里とのなれ初めは物語には
  『内裏わたりにて、はかなうほのめき給ひし名残』
とあるだけで、詳細は分からないが、源氏のことだから、きっと朧月夜を襲ったのと同じ手口であったろう。もしそうだとすれば、家屋侵入罪および強姦罪。(弘徽殿に無断で侵入し、「朧月夜に・・」などとのどかに歌いながら細殿をやって来た朧月夜の袖を捉えて、誰ともわからないのに強引に犯してしまった手口)
  要は、みな源氏の犯しの名残の女性たちばかりなのである。したがって彼には、彼女たちの世話を見なければならない法的な責務がある。しかも彼は今や太政大臣で、余るほどの財にうずもれている。何しろ四町に及ぶ広大な敷地に、三つ葉四つ葉の甍(いらか)が並ぶ六条院を、たった一年で完成させてしまったほどの権勢家であり超富豪家なのである。
  晴れ着として、紫上には葡萄染(えびぞめ)の小袿(こうちぎ)を贈ったとか、花散里には上着や下襲(したがさね)を贈ったとか、末摘花には柳襲を贈ったとか、空蝉には青鈍(あおにび)色の織物を贈ったとか言っても、自慢できることではない。そんなことは彼の財力から言えば、蚊に食われたにも及ばない。

  と、こんなふうに光源氏批判をしていたら、当時の読者である姫君たちは、血相を変えてツィッターしてくることだろう。特に菅原孝標の娘(更級日記の作者で、源氏物語の絶対的鑽仰者)などは、相模の国まで飛んで来て、恨み言を延々と並べ立てるに違いない。


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