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源氏物語

源氏物語たより540

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     大原野行幸の盛儀と玉鬘の目  源氏物語たより540

  冷泉帝が大原野に狩りの行幸をされることになった。大原野とは、現在の桂離宮のさらに西、約五キロ、大原野神社のあるあたりである。内裏からは直線距離にして約十キロの位置である。
  それはそれは盛大な行幸で、左、右の大臣や内大臣をはじめとして、大納言以下残るものなく付き従った。親王や上達部たちは、馬、鞍を整え飾り、随人たちも顔や背丈の見栄えのする者ばかりを集め、衣装の限りを尽くしている。殿上人や六位以上の者は、みな青色の袍を着、葡萄(えび)染めの下襲という出で立ちで、帝のみが赤色の御衣である。この行列は大変な見物で、京中の人々は
  『世に残る人なく、見騒ぐ』
有様となった。
  卯の刻(朝六時)に御所を出発し、朱雀大路を下り、五条で西に折れる。
  『桂川のもとまで、物見車ひまなし』
という混雑で、沿道は人、人で溢れている。桂川に至ると、舟を並べてその上に板を敷き、これを橋(いわゆる浮橋)として渡って行く。

  この見物人の中に玉鬘も交じっていた。恐らく光源氏の指図なのであろう。というのは、源氏は、玉鬘を尚侍(ないしのかみ)として宮仕えさせたいと思っていたからである。そのためには、一度くらいは帝のお姿を見ておく必要がある、清らな冷泉帝を見れば、玉鬘は必ずおそばに仕えてみたいと思うはず、という計算をしたのだ。ここには源氏の複雑な思い(玉鬘への邪な懸想心)が錯綜しているのだが、その経緯についての詳細は省くことにする。
  行列の中には、玉鬘の実の父・内大臣も加わっている。実父を見るのは初めてのことで、彼女の目は人知れず父の上に注がれる。確かにきらびやかで美しく男盛りの魅力も湛えている。しかし所詮は臣下である。自ずから限度というものがあって、帝の「清ら」には比べようもない。
  帝のお姿は、玉鬘の目には
  『うるはしう、動きなき御かたはら目に、なずらひ聞こゆべき人なし』
と映った。「端然として、前を見据え、身動きもなさらない横顔は、誰ひとりとして比べものにならない」というのである。そして、「いつも見慣れている源氏さまも、たぐいまれな容姿をしていらっしゃるけれども、帝の方がさらに威厳があり、恐れ多い雰囲気をたたえていて、ご立派である」と感じられ、このお方のおそばで仕事ができるのだったらとても素晴らしいことに違いないと、源氏の思惑通り心を動かすのである。
   この玉鬘の感想は、帝王学を学んで育った者に共通する威厳であり、清らなのかもしれない。以前、能登を旅行している時に、今の皇太子を直接見たことがあるが、凡人とはまるで違い、お顔全体から、オーラが発せられているように感じた。冷泉帝を今の皇太子と比べては失礼に当たろうが(?)。

  それにしても、冷泉帝を目の当たりにした玉鬘から見られた他の連中は気の毒である。玉鬘の目に彼らは
  『いで消えどもの、かたはなるにやあらむ、同じ目鼻とも見えず』
と映るのだから。「いで消え」とは、「一人でいる時は、それなり立派に見える容姿でも、いざ源氏や帝などのような人の前に出ると、まったく精彩をなくしてしまって見劣がして、いないのも同じ」というようなニュアンスである。それを「かたはなるにや」と言っているのだから、随分人を侮った言葉ではないか。そして、それよりもさらにひどいのが 「同じ目鼻とも見えず」である。帝や源氏に比べれば、「同じ人間の目鼻とは思えない」というのだから、人間扱いではない。侮辱の極みで、現代だったら、大問題になる表現である。
  この表現が、紫式部の独創であるかどうか分からないけれども、とにかくこういうことになると、彼女の筆が冴えわたるのだ。これは、末摘花や近江の君などで見てきたところである。
 
  まして、彼女の婿がねの一人である鬚黒大将などはさんざんである。見た目には、貫禄があるし、教養はありそうだし、今日の装いはなかなか華やかではあるが、やなぐひ(矢を入れて携帯する用具)を背に負っている姿は
  『色黒く、鬚がちに見えて、いと心づきなし・・(玉鬘の)若き御心地には、見おとし給ひてけり』
と映るのである。「心づきなし」とは、気持ちが悪いということである。おそらく即座に鬚から目を背けたのだろう。

  この後、玉鬘は尚侍として帝のおそばに仕えるようになるのだが、
  なんと、その時には、あの色が黒く鬚がちで「気持ちが悪い」と思った鬚黒大将が、彼女の婿になってしまっていたのである。
そして、宮仕えをしていたある日、大将は、彼女を強引に自邸に引き取ってしまい、帝の期待を裏切り、源氏の邪な恋心をも粉砕してしまう。
 
  源氏物語にはどんでん返しの構想が処々に用いられており、それによって読者の興味・関心を惹きつけようとしているのだが、この予想外の結婚もその典型で、『真木柱』の巻頭には、多くの読者が「え!まさか!」と驚いたに違いない。玉鬘の行幸の時の目も、源氏の思惑も何の意味もなかった、という結末になる。


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