源氏物語

源氏物語たより37

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  女は30でおばあちゃん? 源氏物語たより37

 平安時代の平均年齢を知ることは、必ずしも簡単なことではないが、現代よりもはるかに低いということは間違いないことだ。平安時代の三十二人の天皇(桓武天皇から後鳥羽天皇まで)の平均寿命を調べてみたら、43・7歳であった。現代の男性の平均寿命よりも、35、6歳も若い。


 今まで、源氏物語などを読んでいて、登場人物の年齢を見るのには、40歳以上は概ね20歳を加算すればよいと思っていた。たとえば、40歳の人物は、今なら60歳という具合にである。しかし、この天皇の平均寿命からすれば、それよりも相当多く加算しなければならないということが分かる。
 30代では20を、40代では25を、50代では30を、それぞれ加算するくらいが妥当なのかもしれない。
 光源氏は、52歳でこの世から消えた(亡くなったのは57,8才か)、現代の年齢にすれば82歳ということになり、長寿の仲間といっていいだろう。

 このことから考えると、女は、30歳を過ぎるとおばあちゃんといってもあながち間違いはない。新潮社の『源氏物語手鏡』(清水好子ほか編)にはこうあった。
 「女の盛りは15,6歳から20歳余りくらいで、30を過ぎれば“おばあちゃん”、40を過ぎると“老女”であった。」
 それにしても、現代の日本人の平均寿命は延びすぎているようで、つい最近の童謡でさえ、
 『村の渡しの船頭さんは 今年六十のおじいさん』
と歌っていたのだ。この歌は昭和の初期の歌であろうか、わずか7,80年で10歳も伸びてしまったということだ。1000年も昔の人に、20,30を加えることは仕方のないことかもしれない。
 源氏が愛した女性も、みな20歳前後である。ただ、六条御息所ばかりは、源氏よりも8歳も年上であった。源氏が20歳の時にはすでに28歳で、“おばあちゃん”の仲間入りをしようかという年齢であった。彼女はこのことをひどく負い目に感じていて、
 『女(六条御息所)も、にげなき御年のほどを、恥ずかしう思して、心とけたまはぬ気色なれば』
だったので、二人の仲はなかなかしっくりといかず、ついに生霊問題にまで発展してしまう。

 ところが、「歳など何さ」という猛者が登場するのだから、源氏物語は面白いのだ。
 その名を“源典侍(げんのないしのすけ)”という。典侍とは、内侍(ないし)どころの次官で、従四位、相当偉いのである。
 彼女の年齢は、57,8歳である。例の計算でいけば87,8歳ということにもなってしまう。彼女の名誉のために少々甘く見積もってあげても、77,8歳ということである。
 この女が、また飛び切りの好色女であった。
 『いみじゅうあだめいたる心ざまにて、そなたには(好色の面では)重からぬ』
女で、源氏も当初は、
 『かう、さだすぐる(こんなに盛りが過ぎる)まで、などさしも乱るらん』
と呆れていたのだが、その筋にかけては源氏も負けてはいない。

 ある時、通りかかった源典侍の裳をちょいと引いて、気を引いてみたところ、彼女はすっかりその気になってしまった。
 そして、しばらく後、源典侍の局で契りを交わしてしまったのである。
 ところが、この現場に、なんとなんと、頭中将が乱入してきたではないか。源典侍は、頭中将をも恋人にしていたのだ。そこで、恋のさや当ての乱痴気騒ぎが始まった。
 源氏は、もちろん当代随一の美男の貴公子である。頭中将だって、そうそう負けてはいない男である。その二人を同時に相手にするのだから、源典侍の魅力たるや相当のものだったはずである。
 「家柄もよく、才気もあって、品もあり、しかも琵琶の名手」
だという。おそらく容貌も捨てたものではなかったのだろう。
 それにしても、その年を考えるとやっぱり「立派!」と言うしかない。

 いつであったか、ゲートボールで恋のさや当てになり、ステックで殺傷事件を起こした、というニュースがあったが、「おお、結構なこと!」と感動した記憶がある。   
 源氏は、36歳にして、20歳そこそこの玉鬘に熱を上げている。それが彼の若さを保証したのだ。
 どうやら、恋には歳は関係ないようである。いつまでも若くいられるためには、恋をすることが一番であるようだ。私のように、歳とともに出不精になると、服装に気を配ることもなくなるし、鬚さえすることもなくなってしまう。 
 我々は、源典侍の心意気を見習わなければならないようだ。
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