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源氏物語

源氏物語たより575

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     アンチエイジング   源氏物語たより575

  小泉今日子が(50歳)が、「GLOW」という女性誌で「アンチエイジング」に対しての疑問を呈したところ、大変な反響を呼んだという。アンチエイジングとは、広辞苑によれば「老化を防止すること」だそうで、これ自体に何の問題はない。誰でも老化防止に心がけているだろうし、そのために運動したりして一生懸命励んでいる人もいる。
  ただ、小泉今日子の主張はそのことではない。行き過ぎたアンチエージングのことを批判しているのである。年齢に逆らって、若さを保つためにさまざまなサプリを飲んでみたり、高価なクリームを塗ってみたり、中には顔の整形を施してみたりしている、そういう行き過ぎに警鐘を鳴らしたのである。
 
  確かに、テレビや雑誌には化粧品やサプリメントが満載で、アンチエイジングのための手段・方法がこれでもかと言うほどに溢れている。
  今朝の新聞広告にも化粧品(ドモホルンリンクル)のチラシが入っていて、こうあるではないか。
  「見た目年齢、大逆転 驚きの違い ~肌に差が出る 自信に満ちる~」
  テレビなどでも、若々しい肌をした女性の写真を見せて、「この人、何歳に見える?」と街行く人にリポーターが聞いている。大半の人が「30歳!」「40歳!」などと答える。するとレポーターは、「正解は・・」などと言って気を持たせながら、
  「実は65歳!」
などと言う。すると街行く人々は一斉に「え~!!」などと驚嘆の声を上げる。そして「それもこれも黒酢にんにくのおかげ」とか、「すっぽんエキスため」とか言って宣伝にこれ勤める。
  ヤフージャパンなどもそうだ。ヤフージャパンを開くや、朝丘雪路(78歳)が化粧品を手にして、にこっとしながらこちらに目を向けている。朝から気分が悪くなる。
  ヤフージャパンのアンチエイジングの項を見ていたら、「プラセンタ」という言葉が載っていた。プラセンタとは元は「胎盤」のことで、その胎盤からの抽出物を言うそうだ。これから化粧品などを造るという。多くは豚の胎盤からのものであるが、馬から取ったものが一番高級なのだそうだ。そこまではいいのだが、
  「クレオパトラや楊貴妃も使っていた」
とあったのには目を疑ってしまった。まさか楊貴妃がプラセンタを使っていたとは信じられないことだ。でも、いずれにしても、二人とも悲劇の内に若くして死んでしまったのだから、あまり意味はない。

  こんなことを書いていたらきりがない。小泉今日子に戻ろう。彼女の主張は、過度なアンチエイジングに疑問を投げかけたもので、さらに
  「人は年齢相当でいいではないか」
と言うのがその主旨なのである。それぞれの年齢に応じて輝くものがあること、それが大事であると言っているのだ。
  私も基本的にはその意見に賛成である。顔にお化粧を厚く塗りたくったり、付けまつ毛が顔からはみ出たりしている女性を見ると、背筋に冷たいものが流れる。まして、整形手術を施した鼻だ、顎だなどと知れると、まともに相手を見ていられなくなる。
  顔にしわやたるみや、シミがあってもいい。問題なのはその人柄である。話していて味わいのある人か、何か教えられるものがある人か、心が温かくなる人か、それこそが肝心なのである。

  しかし、さらに我が内心の叫びを探ってみると、やはり「若くありたい!」が本音なのである。光源氏もやはりそうであった。

  『野分』の巻に、息子・夕霧が、野分(台風)の見舞いのために朝早々、源氏の所にやって来る場面がある。紫上も夕霧の姿をほの見ている。夕霧が帰った後、鏡を見ながら源氏は紫上に向かってこう言う。
  「夕霧の朝の姿は、我が子ながらとても美しかったな」
  そして内心では、若き夕霧と比べていたのだろう、
  『わが御顔は、古りがたく、よし』
と思っているようなのである。「古りがたく」とは、歳を取らず若々しいということである。「私の顔は何時も若々しく、美しい」と言うのだから、相当の自信と言える。たとえ内心の言葉とはいえ、少々嫌味を感じるのだが、光源氏では文句も言えない。この時、彼は三十六歳、現代で言えば五十歳を過ぎている。
  天賦の美麗な容貌を持つ源氏にして、やはり若くありたいという思いは凡人の我々と同じようである。

  同じ『野分』の巻に、風が激しいので格子を下すよう源氏が命じているところがある。その姿を、夕霧が物陰から覗いている。そして、語り手はこう源氏の姿を評する。
  『親とも思えず、若く清げに、なまめきて、いみじき御かたちのさかりなり』
とても夕霧の親とも思えないほどに、若く美しい、と見ているのだ。「なまめかし」とは、みずみずしくつやつやとした、輝くような美しさを言う。源氏の容貌は、なまめきてまさに今が盛りに見えると言うのである。
  源氏がいつまでも若くあることは、源氏自身の思いであるばかりでなく、源氏物語の語り手にとっても読者にとっても、譲れない一線だったのだ。

  ところで、当時は「賀」がよく行われたものである。多くは長寿を祝うためのもので、「四十の賀」「五十の賀」などが大々的に行われた。
  『若菜上』の巻では、源氏の四十歳の賀が行われている。現代でいえば還暦の祝いに当たるだろう。その賀たるや、我々には信じられないほど大仰な催しなのである。賀宴は一年にわたって何回も取り行われる。そして、その都度主催者が異なり、そのたびに上達部などの百官が群れ集まって祝い事をする。
  正月に行われた源氏の四十の賀は、玉鬘が主催した。しばらくぶりに源氏と玉鬘が対面する。その時の源氏の姿がこう描かれる。
  『いと若く、清らにて、かく御賀などいふことは、ひが数へにやとおぼゆる様の、なまめかしく、人の親げなくおはします』
  この文章、よく見てみてみると、『野分』の巻の先の文章と全く同じであることに気付く。ということは、この四年間、源氏は若く清らで艶めかしい状態のまま、全く変わらないで来たということになる。「人の親げなく」も同じだ。夕霧は既に十九歳、それでも「子供がいるとは思えない若さ」と言うのだから、まるでアンドロイドだ。
  また「ひが数へ」とは、間違って数えるということで、
  「え?この源氏さまが四十歳?まだ二十歳そこそこじゃあないの。ひょっとすると数え間違いをしていない」と言う驚きで、これこそまさに究極のアンチエイジングである。

  彼が本当に自分の歳を知らされたのは、柏木によって、正妻の女三宮を寝取られた時である。この時、源氏は四十七歳。彼の屈辱たるや並大抵なものではなかった。
  その後、朱雀院の五十歳の賀のために、ということで、その試楽が、六条院で行われた。やはり百官が集まった。その席で、源氏は他の者には分からないように、柏木に痛烈な皮肉を言う。
  『すぐる齢(よわひ)にそへて、酔ひ泣きこそとどめがたきわざなれ。衛門の督(柏木のこと)、心とどめてほゝ笑まるゝ、いと恥づかしや。さりとも、今しばしならむ。さかさまに行かぬ年月よ。老いは、え逃れぬわざなり』
  意味は、「年をとると酔ってもすぐ泣き出してしまうものでな、柏木殿は笑って見ていられるが、何とも恥ずかしいことではないか。でもな、若さというものはしばしのことなのだよ。そもそも年月というものは、逆さに流れるということはないものでな。老いはいかんとしてもとどめることができぬものだわ」というところであろうか。
  私にとって、源氏物語の中でこのフレーズほど心に響く箇所はない。源氏は、当然の真理を言ったに過ぎないものの、あまりに痛切な真理ではないか。若さは久しいものではない、老いからは誰も逃れられない、それは誰もが分かっている真理である。光源氏のように生まれながらに世にも稀なる美麗な容貌を持って、華やかに青年時代を過ごし、絶対的権威と富に恵まれていた者にして、この真理を覆すことはできないのだ。そして若き柏木に妻を奪われるような屈辱を味わうことになる。

  歳に抵抗していかに励んでもみても、所詮人は老いに向かって突き進む以外はない。無駄とは知りつつ、それでも抵抗をやめようとしない悲しい人の性を、「アンチエイジング」という言葉は切実に教えてくれる。

 最後に『伊勢物語』から (九十七段)
  『むかし、堀川のおほいまうちぎみと申すいまそがりけり。四十の賀、九条の家にてせられける日、中将なりける翁
  「桜花散りかひ曇れ  老いらくの来むといふなる道まがふがに」』
  「堀川のおほいまうちぎみ」とは、太政大臣・藤原基経のことで、四十の賀が九条の彼の家で行われた。そこに参列していた翁(在原業平  この時五十一歳)が詠んだ歌が「桜花・・」で、古今集にも採られている。
  「桜の花が空が曇るほどに散ってくればいい。そうすれば老齢というものがやってくると人がいう道も隠れてわからなくなるだろうから」
という意である。
  美男は、より一層つらい。

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