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源氏物語

凝った掛詞  源氏物語たより651

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      凝った掛詞   源氏物語たより651

  光源氏三十五歳の秋、六条院が完成する。その翌年の元旦の六条院の様は、あたかも
  『生ける仏の御国(極楽)』
の如しであった。雲一つない空、数ならぬ家の垣根にも雪間に萌え出そうとしている若草、今にも芽を出しそうな木の芽、玉砂利を敷き詰めた庭、磨き上げた部屋々々、そして梅の香が、御簾の内の匂と混ざり合って麗しく匂っている。
 
  紫上お付きの女房たちは、鏡餅まで持ち出して歯固めの祝いをしている。鏡餅も歯固めも健康・長寿を祈るものである。こうして彼女らは
  『千歳のかげにしるき年の内の祝い事』
をしているのである。「源氏さまのいつまでも長く変わらない御蔭(庇護)のもとに、自分たちの無病息災・健康長寿は疑いもなく期すことができる」ということで、彼女らははしゃぎ廻っているのだ。

  と、そこに、源氏がふらりと入って来て、こんな冗談を言う。
  「まあ、大騒ぎをして、大仰にも各自それぞれの祝い事をしていることよ」
  すると、古参の女房である中将の君が得意になってこう応じる。
  「私ごとの祝いなぞ、滅相もございません。源氏さまの千歳の長寿が鏡(餅)に映っておりますからね、源氏さまの健康・長寿をこそお祝い申して鏡餅に話しかけていたところでございます」

  ここには二つの引歌が使われている。
  一つは「千歳のかげにしるき」であるが、これは古今集の素性法師の歌を引いたものである。素性法師は、百人一首の
  「いま来んと言ひしばかりに 長月の有明の月を待ち出でつるかな」
の作者であり、僧正遍照の子でもある。さてその歌とは
  『万代をまつにぞ君を祝ひつる 千年のかげに住まむと思へば』
で、意味は
  「お父上の無限のお命を期待して、この松と鶴にかけてお祝い申し上げます。いつまでも枯れない松のようなお父上の御恩に浴したく存じますので。 (小学館 「日本古典文学全集」)による」
である。実はこの歌は、ある娘に代わって、彼女の父親の四十の賀を寿ぎ、素性法師が代作したものである。

  この歌には実に念の入った掛詞が使われている。
  まず「まつ」である。父上の万代(よろづよ)を待つ(期待する)の「待つ」と樹木の「松」が掛けられている。
  次に「つる」が面白い。完了の助動詞の「つ」の連体形が「つる」なのだが、なんとそれと「鶴」が掛けられているのである。これは全く意表を突いた掛詞と言えるもので、本来助動詞の「つる」は歌語ではないので、このような使い方は許されないのかもしれないが、それを承知で素性法師は使っている。
  これでめでたく「松」と「鶴」がそろったというわけである。古来、常磐木の松と崇高な鶴はめでたいものの象徴であった。今でも鶴と松とが描かれた掛け軸を見ることがよくある。しかも、ここの「万代」は「万年」ということなので、「亀は万年」の「亀」も隠されているのかも知れない。
  とにかく手の込んだ寿ぎ歌で、ここまで徹底して祝われれば、四十の賀の「お父上」もさぞかし舞い上がってしまったことであろう。
  紫上の女房たちは、この歌を引いて源氏の長寿を寿いでいるわけであるが、それは「仏の御国」を創造した光源氏の御蔭を被って、彼女たち自身の平安、安穏、無事に繋がるというわけである。

  もう一つは「鏡餅」に関する、これも古今集の大伴黒主の歌から引いたものである。
  『近江のや 鏡の山を立てたれば かねてぞ見ゆる君が千年は』
  (私の国、近江には曇りなく人の世を映すという鏡山という山がありますので、御即位早々、前もって天皇の長久であらせられますことがそこに映って見えます)
  この歌は、醍醐天皇の即位の時に、近江出身の黒主が、天皇の長久を祝って詠ったものである。先の歌のように特に掛詞が使われているわけではないが、相手の安穏・長久を願う点は同じである。
  女房たちは、鏡餅を持ってきてそれを鏡山になぞらえ、やれ「源氏さまの健康・長寿」であるとか、「紫上さまの平安、安穏」を祈るとともに、自分たちの幸せをも願って大騒ぎしていたというわけである。

  それにしても、いくら上級貴族に仕える女房とはいえ、これらの歌をみんな知っていたということが脅威である。恐らく我々が百人一首を暗記しているように、彼女たちは誰もが古今集や拾遺集、後撰集などを暗記していたのだろう。とともに、歌の意味もその歌に使われている修辞もきちっと理解していたということが言えよう。文化爛熟の平安朝を垣間見る思いがする一場面である。


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