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源氏物語

あいなきこだわり  源氏物語たより658

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     あいなきこだわり   源氏物語たより658

  『御文、いと忍びてぞ今日はある。あいなき御心の鬼なりや』
  「御文」とは、光源氏から明石君へ当てた後朝の手紙のことである。実は昨夜は、二人の間で初めて契りが交わされた、いわゆる初夜であった。三月(十三日頃)に須磨から明石に移って来て、昨夜が八月十三日。明石入道が何とか源氏と娘を結び付けようと、あれほど必死になっていたにもかかわらず、これだけの期間を要したことになる。別の観点から言えば、この五カ月の間、源氏は女とは一切関係を持たずに過ごしてきたということで、これは「光源氏」とすればまことに珍しい現象である。
  いずれにしても、源氏にとっては久しぶりの女ということで嬉しい限りで、通常であれば堂々と手紙を出すはずなのだが、今回ばかりはそれができなかった。なぜなら、源氏にとって、明石君との交接は「あいなき心の鬼(良心の呵責)」に触れるからである。
  「あいなし」とは、「どうでもいい」とか「余計な」という意味で、「別にそんなに良心に咎めることもあるまいに」ということなのだが、源氏にとっては、とても「どうでもいい」ことでも「余計な」ことでもなかった。彼には、このことを公にできない理由があった。

  一つは、紫上への遠慮である。須磨への退去に際して、こんな歌を残している。
  『身はかくてさすらへぬとも 君が辺り去らぬ鏡の影は離れじ』
  「どんなに遠くさすらえようとも、あなたのそばを離れることなど絶対にありません」という意味で、言い換えれば「どんなことがあろうとも、他の女に心を移すようなことはありません」という固い誓いでもある。にもかかわらず、流謫先で、愛人ができてしまったでは済まされない。それが彼の「心に鬼」になっていて、初夜の翌朝の後朝の文だというのに、「いと忍びて」贈るしかなかったのだ。
二つ目は、世間への配慮である。特にこんなことが弘徽殿女御の耳にでも入ったら、大ごとになる。それでなくとも須磨にわび住まいしていた時ですら、
  「源氏の流謫生活は派手すぎるし豪奢すぎるではないか。公の咎めを受けた者のすることではない」
とひどく怒っていた。もし「愛人」まで作って、流謫先でのうのうと生活をしているという噂が入れば、彼女の怒髪は天を突くことであろう。
  したがって、彼が「忍びて」後朝の文を贈ったのは、決して杞憂からではなかったのである。

  ともあれ、これで入道の宿願がかなったのだから、彼としても大喜びであったはずだが、やはり源氏の思いは、入道としても斟酌しなければならない。そこで、源氏の後朝の手紙を届けて来た使者を歓待したい気持ちを抑え込まなければならず、
  『かかることいかで漏らさじとつつみて、御使いことごとしうも、もてなさぬを胸痛く思』
うしかなかった。源氏から娘に初めて手紙が贈られて来た時にさえ、彼は
 『御使い、いと眩きまで酔は(せ)』
ている。ところが、今回は、宿願どおりの娘の結婚であるにもかかわらず、「かかることいかで漏らさじと」内緒にしなければならなかったことは、いかに無念な思いであったか、推して知るべしである。
  特に彼は、三日夜の「所顕し(結婚式の披露宴のようなもの)」は盛大に行いたかったのではなかろうか。自分の娘が、今は罪びととはいえ、近衛中将であった貴族中の貴族・光源氏と結婚できたのであるし、これにより彼の長年の宿望が成就したのだから、いかに豪勢な披露宴を開こうが、満足できものではなかったはずだ。
 
  さて、源氏にとって初夜の明石君の印象は
  『伊勢の御息所にいとようおぼえたり』
であった。「伊勢の御息所」とは、もちろん六条御息所のことで、彼女は、故春宮の妃であった。家柄といい趣味・教養といい気品といい、当代随一の女性である。それに似ているというのだから、いかに明石君を高く評価したか推測するにやぶさかではない。しかもその夜を
  『常は(秋ということで)いとはしき夜の長さも、とく明けぬる心地すれば』
と感じている。彼の心は完璧に明石君に移ったのだ。
  ところが、彼の「あいなき心の鬼」は相変わらず消えない。それからというものは
  『忍びつつ、時々(明石君の所に)おはす』
程度になってしまったのである。「時々」とは、この場合は「ほんの時たま」ということになろう。恋しい気持ちをじっと我慢したのだ。これが明石君を嘆かせることになる。「やはり捨てられるのか」と。

  それも紫上がこの噂を聞くことを怖れたことが最大の理由である。彼は、噂が紫上の耳に入るのを怖れ、先手を打って訳のわからない弁解の手紙を紫上に送っている。
   『またあやしうものはかなき夢をこそ見はべりしか』
と、「夢」にしてしまった。これでは鈍い者には、彼が何を言いたいのかまた何事があったのか理解できない。しかし、鋭い紫上には、「また」という言葉だけで、ピンとくるのだ。「またあの人は悪い女癖が出て・・」。
  それにしてもよくここまでこと細かに源氏の心のひだひだを描写したものである。女性作家にしかできない芸当と言っていいかもしれない。

  いずれにしても、この源氏の「あいなき心の鬼」が細心の配慮を生み、それが後には彼に絶大な権勢と、明石一族には最高の家運をもたらすことになる。したがって、「心の鬼」は、決して「あいなき」ものではなく、重大な意味を持っていたということになるのである。


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