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源氏物語

紫上の明石姫君養育について  源氏物語たより675

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     紫上の明石姫君養育  源氏物語たより675

  明石姫君を、大井の明石君から引き離し紫上に養育させようとした光源氏だが、子を産み育てた経験のない紫上がどれほど養育できるというのだろうか。確かに、紫上は
  『ちごをわりなうらうたきものにし給ふ御心なれば、(姫君を)得て抱きかしづかばやとおぼす』
ほどなのだから、姫君を可愛がることには違いはないであろう。
  ただ、彼女が、「子供を殊の外、可愛がる人柄」というのは、話の上では極めて唐突であるし、取ってつけた感がなしとはしない。今まで、彼女と、いかなる子供との接点も一切なかったのだ。源氏が、ある時突然どこの馬の骨ともしれない女(明石君)の、その子を紹介し、「あなたが養育してくれればありがたい」と言い出した時に、急に紫上は「子供好き」になってしまった。源氏物語には珍しい説明不足であり、杜撰と言われても仕方がない。
  また、明石姫君が二条院に引き取られてきて、その後、源氏が大井の明石君に会いに行くと言った時にも、さして嫉妬もしなかったのは
  『うつしき人(姫君)に罪許し聞こえ給へり』
ということが理由で、姫君を得たために源氏の浮気が帳消しにされてしまった。
  さらに奇妙なことには、源氏が大井に出かけてしまった時に、彼女は姫君を
  『ふところに入れて、うつくしげなる御乳をくくめ給ひつつ、たはぶれゐ給へる』
ほどに可愛がるのである。これは信じられない行為である。「御乳をくくめ」とは、姫君の口に自分の乳を哺ませることである。子をなしたことのない女性が、やって来たばかりの子供に乳を哺ませるなどということがあるであろうか。しかも女房たちの見ている前でのことなのである。
  この辺りの筋の運びにはいささか無理があると言わざるを得ない。
  源氏は最愛の紫上を都に残したまま、諸般の事情を考慮して泣きの涙で須磨に逃れ、明石に蟄居したのである。正式な流罪ではないと言っても罪を負って都落ちしたことに違いはない。その流謫の最中に愛人を作り、子までなしてしまったのだから、紫上とすれば到底許すことのできない不遜、不貞、不倫(倫理的でないという意味の不倫)と考えるであろう。
  その愛人の子をこうも簡単に溺愛することができるだろうか。

  もう一つ、この場面には無理がある。姫君を紫上に預けるについて、明石君を説得した時の源氏の言い分である。こう言っている。
  「紫上は、すっかり大人になった前斎宮をさえ、強いて親代わりとしてお世話しているのですから、ましてまだ乳飲み子の姫を育てるに何の心配がありましょうか」
  紫上が、前斎宮をそんな風に世話したとは何処にも記述はなかったのだし、何しろ前斎宮は二十歳を過ぎていたのである。そんな大人を紫上が世話をするだろうか。いくら明石君を安心させようという算段だとしても無理なこじつけである。

  さて、これらのことは、あえて省いた部分であるとして認めるとしても、内大臣・光源氏の正妻である者が、どこまで姫君を養育できるものであろうか。姫君には、源氏がわざわざ京から明石に遣わした乳母がいるし、もちろん現地の明石にも元々の乳母がいる。さらに別途に 
  『またやむごとなき人の乳ある(を)そへて(二条院に)参り給ふ』
と新たな乳母まで付けているのだ。それも身分が格段に好く、乳がたっぷり出る女性である。
  したがって、紫上が姫君の養育をする隙はないように思われるし、この後にも彼女による明石姫君養育の様子は特別描かれていない。もちろん琴や歌やその他の学問などは、この乳母たちやそれぞれ専門の女房たちが教えたのだろうから、一体紫上は姫君に何をしてあげる余地があっただろうか。

  ずっと後に、明石姫君が春宮の妃になった時に紫上のことを
  「実の母親以上に思う」
と述懐する場面がある。また紫上の臨終にあっては
  『宮(明石中宮)は、(紫上の)御手をとらへ奉りて、泣く泣く見奉り給ふに、誠に消えゆく露の心地して・・明けはつる程に消え果て給ひぬ』
のである。紫上の最後の最期に姫君がその手を握っている。誠に真の母以上の孝である。しかし、中宮という身分であれば、いくら真の母以上の母とはいえ、手を握ってその死を看取ることなどあるだろうか。
  とにかく、姫君が、かくのごとく紫上に心服し信愛するほどに心を込めて育てきたのだろうがその記述がない。

  源氏物語には「書かれぬ部分」が多いということは、しばしば見るところである。余計なことは省くという姿勢が紫式部にはきわめて強いから、それもやむを得ないことであるし、源氏物語は光源氏の物語であって、紫上の養育などは除外されてしまうのは仕方のないことではある。ただ、少なくとも紫上は、源氏物語のカギを担う一方の重大なヒロインなのである。その紫上の像が、「省筆」の犠牲のために薄れてしまっていることも否めない事実である。とにもかくにも紫上は、源氏の最愛の妻であり理想の女性なのだ。
  彼女の人となりと言えば、源氏の目と心から捉えたものが大半で、彼は、やれ「愛している」と言い、やれ「理想の女性である」と持ち上げる。しかしどう理想の女性であるのかははっきりと見えてこない。はっきりしているのは「嫉妬深い」ということぐらいである。これも源氏の一方的な思いであり、自己の婀娜心(あだごころ)を韜晦(とうかい)する手段に過ぎないのだが。
  紫上がどのように理想的な女性であったのか、私は姫君の養育に関してもう少し述べられても良かったのではないかと思う。そうすれば
  「ああ、紫上ってやっぱり素晴らしい女性なのだな」
という思いを一層深めることができるのではなかろうか。

  姫君がものも分からない数え三歳の時に、突然実の母親から引き離され、二条院にわたってきた時に、心細さから泣いたりしていたのだが、
  『うえ(紫上)にいとよくつき睦びきこえ給へば』
と、まずは紫上になつき睦まじくする場面がある。紫上の優れた資質というものを垣間見ることができるごく限られた描写(具体性はないが)である。しかし、その後が描かれない。姫君が十歳ころのかかわりを、たとえ一か所でも描いてくれたらと残念に思う。
もし描かれていたら、そんな理想的な女性をないがしろにして、他の女性に心を移す源氏という男への憎しみがいっそう湧いてくるだろう。また、女三宮降嫁に際しての三日夜の彼女の哀しみや、『御法』の巻における彼女の死の「あはれ」が、いっそう真実味をもって捉えることができ、読む者の心に深く刺さって来るであろうに。


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