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源氏物語

光源氏の冗談  源氏物語たより676

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     この訳おかしくないか ~光源氏の冗談~  源氏物語たより676

 
  夕顔のかつての侍女・右近は、夕顔の忘れ形見(玉鬘)を見つけ出したいと、長年にわたって初瀬観音に詣でていた。今回、その効験があって椿市で玉鬘一行に遭遇した。右近は、玉鬘が筑紫で育ったとは思えないほど洗練された美しい娘に育っていることに驚嘆するとともに、ここまで育ててくれた乳母に感謝するのであった。

  翌日は、二つの集団は一緒になって長谷寺の僧坊に降りて、心安げに四方山話に花を咲かせる。それらの話しの中でも玉鬘の容貌に引かれたためであろう、自ずから美人談義となっていく。右近は言う。
  「光源氏様のような高いご身分の方に御奉公するようになって以来、多くの女性方を見るようになりましたが、源氏さまの北の方でいられる紫上様ほど美しい方は見たことがありません。また明石姫君の御容貌も誠に美しくめでたい方でございます。  
  でも玉鬘さまも、このお二方に劣らないほど美しくていらっしゃいますよ。
  故藤壺宮様もお美しい方と伺っておりますが、私は見たことがございませんし、また姫君もまだ大層幼くていらっしゃいますから、これからどう成長されていきますやら。
  さて、紫上様のことでございますが、誰も並び立つものがいらっしゃらないほどの美しさで、源氏様も口には出さないものの、それは認めていらっしゃいます」

  いつまでも右近の美人評定の話は続く。そして、紫上のことを源氏は次のように言っていると付け加える。
  『われにならび給へるこそ、君はおほけなけれ』
  「われ」とは源氏のこと、「君」とは紫上のことである。「おほけなし」とは、辞書的には「分不相応だ、身のほど知らずだ」という意味である。源氏が冗談に紛らわして言っているのだが、さて果たしてここはどう考えたらよいのだろうか。どの解説書やどの訳書を見てもしっくりこないのである。いつも使っているものを列挙してみよう。

  (小学館)この私に連れ添っていらっしゃるなんて、あなたは分に過ぎたお方だ。
  (角川書店)私に並んでいらっしゃるのは(私と夫婦であるの意)、あなた分に過ぎますよ。
  (岩波書店)美しいわれに並びなされた(夫婦になられた事)こそ、あなたは身分不相応(分に過ぎているの)である。
  (林望)そなたは妻として私と肩を並べている、それこそ、身の程に過ぎた幸せだ。
  その他、円地文子は小学館と全く同じであり、瀬戸内寂聴は角川書店に同じである。

  いずれも共通するのが、二人が「夫婦」として並んでいることと解釈している。そうだろうか。源氏は二人が夫婦であることを分不相応と言っているのであろうか。もしそうだとすれば源氏という男は随分無礼千万・不埒極まりなくいけ好かない奴と言うことにならないだろうか。そもそも十七年間も連れ添ってきた妻に対して
  「俺と夫婦であるお前は、分に過ぎた女だ」
などと言うだろうか。夫婦喧嘩でもして言ったとすれば、分からないでもない。でも夫婦喧嘩としてもそんなことを言われば、いたたまれなくて女は出ていくしかないだろう。
 
  確かに、源氏は天皇の子であり今や太政大臣である。釣り合う女性と言えば大臣の娘か内親王くらいしかない。紫上は、父親こそ宮様であり今上の信頼も厚い。しかし、母方はすっかり没落してしまっている。この事実からすれば間違いなく太政大臣の妻としては「分に過ぎている」し「分不相応」である。
  しかし、たとえ事実だとしても、源氏の口からは決して出ない言葉である。それには二つの理由がある。
  一つは、源氏は紫上をこよなく愛していることは確かだし、理想の女性であるといつも認識しているということだ。それに何よりも、源氏が十八歳の時に、北山で垣間見た紫上を拉致まがいに強引に自分の邸に連れて来たのである。彼女に対して一切文句を言える立場にはない。後に女三宮の降嫁に当たって、彼が紫上にあれほど下手に出、遠慮がちに面目なく恥じ入りたく思ったのは、このような経過があるからである。
  二つ目は、いくら紫上が源氏に無理に二条院に連れて来られたとはいえ、源氏との身分差は歴然としていて隠しようがない。そのことを彼女は常に劣等感として持っていた。彼女とさして身分差がないと思われる朝顔に源氏が熱を上げた時にも、「自分は源氏に捨てられるかもしれない」ことをひどく恐れたものである。
  このような情況があるにもかかわらず、
  「お前が俺と夫婦として並んでいるなど、分に過ぎている」
など言うはずはないではないか。もし言ったとすれば源氏は品性本来下劣な男と言わざるを得なくなってしまう。

  それではなぜ学者や訳者はここを取り違えてしまったのだろうか。
  それは右近の話しを正しく把握しなかったからである。物語の流れを見忘れてしまって源氏の冗談に引っかかってしまったからである。

  それでは、もう一度右近の話を振り返ってみよう。彼女は、ここで終始一貫して
  「美女とはどういう女性か」
ということを主題にして話をしている。夫婦の話でもないし身分上の問題を取り上げているわけでもない。その中でも、「世の中で一番美しいのは紫上様のような人であり、玉鬘様もそれに劣らないほどの美しさである」ということを強調しているのである。

  右近が言うまでもなく、源氏は、紫上の美しさは、藤壺宮に並ぶものとしていつも感嘆している。だからそれは今に始まったことではないのである。でも自分の妻が「美しい」などとどこの男が言うだろうか。(時に惚気(のろけ)る男がいるが、聞いていて不快なだけだ)
  でも心中では言いたくてならないのだ。言えない時にはどうするか。冗談に言い紛らわすしかない。しかも源氏は冗談がお得意である。そこで「われにならび給へるこそ・・」という言葉となったのである。つまり美しさにおいて「私と並んでいる」ということである。私ほど美しい男はいない、にもかかわらず、あなたはその点で私に並んでいるとは「おこがましいのでは・・」と言ったのだ。
  紫上は、右近が言うように、いつもみなから美しいと思われ時に言われもする。そのことが源氏を刺激しているのだ。もちろんやっかみでも嫉妬でもない、紫上を愛するが故である。
  源氏は変な男で、よく我褒めをする。京を離れ須磨に落ちて行く時に鏡を見て
  『面痩せ給へるかげの、我ながらいとあてに清らなれば』
と内心思っているし、『野分』の巻でも鏡を見て
   『我が御顔はふりがたく良しと(見給ふべかめり)』
と臆面もなく思っている。もっともここは「めり」があるから許されるが。
  「そんな俺に美貌の点で並ぶとは」ということで、そのことを「おほけなし」と言っているのである。この「おほけなし」を辞書的に訳してしまうから「分に過ぎる」になってしまうのだし「身分不相応」になってしまうのだ。「冗談」「冗談」である。もっと軽く訳さなければならない。「おこがましんじゃァないの」とか「あんたちょっとまずいんじゃあないの」とかが適当なのではなかろうか。
  冗談の中にお惚気が滲んでいて、彼がにやにやしている姿が髣髴とする。

  これに続く右近の言葉にも気を付けなければならない。
  『見奉るに、命のぶる御有様どもなり』
  二人を見ていると寿命が延びるというのである。それほどに並び立って美しいと言っているのである。夫婦も身分も離れた美しさを右近は言っているのである。
  で、この稀に見る美しいお二人に、玉鬘が匹敵する言い、
  『これをすぐれたりと聞こゆるなめりかし』
とまで右近は絶賛している。それほどに玉鬘の美貌は群を抜いていたのだろう。それゆえに後に源氏は玉鬘に年甲斐もなくのぼせ上ってしまうのだ。このように右近の話は乱れることなく「美貌」を焦点化している。
  ところで、この『玉鬘』の巻を含めて以下十帖を「玉鬘十帖」と言って「つまらない」巻としての定評がある。美しいものに現を抜かすほど外から見ていて面白くないものはないからだろう。玉鬘も罪な女性である。
  もっとも、この『玉鬘』と『野分』と『真木柱』の巻は面白いが。



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