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源氏物語

花散里への特別配慮のわけ  源氏物語たより688

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     花散里への特別配慮のわけ  源氏物語たより688

  光源氏は、当然のことであるが年賀の挨拶にはまず紫上の所に回って行き、その後、夏の町の花散里を訪ねた。夏の町はどこもかしこも浮ついたところがなく、気品が漂っている。 
  源氏と花散里との関係は年月が経つにしたがって、互いに心の隔てもなく、
  『あはれなる御なからひ』
となっていた、とある。
  この「あはれ」をどう解釈したらいいのだろうか。
  「あはれ」については、今までも何度も取り上げてきたが、現代の「可哀想、気の毒、みじめ」というような内容ではあまり使われず、極めて幅広い意味を持っている。整理すれば。
  恋しい愛しいなどの「恋・愛の感情」
  幼子などに覚える「可愛いと思う情」
  昔を偲ぶ「懐旧の情」
  死別・生別などに際しての「哀傷の情」
  特別な事柄に対して感心・感動を催す時の「殊勝に思う情」
  物・事が推移する時に感じる「変化に対する感懐」
  素晴らしいもの、趣あるものに触れた時の「情趣深さへの感慨」
などとなろう。とにかくうれしいにつけ悲しいにつけ、しみじみとした深い感動を受けた時に感じる心情と言えばいいだろう。訳に困った時には「しみじみ・・」を付けておけば概ね正解になる。
  したがって、標題の「あはれ」も「しみじみとした(夫婦仲)」とでもしておけば正解と言えるのだろうし、諸注も多くが「しみじみした仲」あるいは「しんみりした仲」と訳している。

  ところが、源氏と花散里との間には、恋・愛の感情は全く存在していず、そのためにこの「あはれ云々」を、単に「しみじみ情が通い合っている夫婦」というわけにはいかず、ややこい点が出て来る。ここで源氏が花散里をもてなす様子が、次のように描かれる。
  『今はあながちに近やかなる御有様も、もてなし聞え給はざりけり。いと睦ましく、ありがたからむ妹背(いもせ)の契りばかり聞えかはし給ふ』
  「近やかなる・・もてなし聞こえ給はざり」とは、端的・簡潔に行ってしまえば、
  「花散里とは床を一緒にすることはない」
ということになる。もちろん彼女の所に泊まることなど絶えてないのだ。泊まることさえ絶えてないのに、大層睦まじい仲とは、一体どんな夫婦なのだろうか。そんな矛盾した夫婦ってあるのだろうか。
  次に「ありがた(し)」であるが、現代語で感謝の意味を表す「有り難い気持ち」ではない。「めったにない、極めて珍しい」という意味で、世の中にめったにない珍しい夫婦ということになる。それは一体何を言っているのだろうか。「閨を共にすることのない夫婦」ということであろうか。
  ここでわざわざ「(妹背の契りちぎり)ばかりは」と断わっているが、これも理解しにくい。「睦まじいけれども閨は共にしていないと言う世にも珍しい夫婦の契りだけは交わしていられる」ということになるのだろう。
  この描写は、まことに歯切れの悪い言い方で、作者の意図が汲み取れない。もっとはっきり述べた方がよかったのではないか。「本当には睦まじい夫婦ではないのだが、珍しくも末永い夫婦の契りだけは交わしていました」でいいではないか。あるいは何か真実をきっぱり言えない花散里に対する遠慮でもあるのだろうか。

  次に、源氏が取った行動を見てみよう。
  『御几帳隔てたれど、少し押しやり給へば、(末摘花は)またさておはす』
  なんと夫婦だというのに、几帳を隔てて対面していたのである。とにもかくにも夫が年賀に来たのである。いくら平安時代の夫婦とはいえ、元日に「几帳を隔てて」会うだろうか。現代の感覚であれば、もう「絶望的な夫婦」であると言うしかない。もっとも現代では家庭内別居と言うのが流行っているらしいから、一概に「絶望的」とも言えないが、それにしても几帳を隔てながらの夫婦では、とても「末永い妹背の契り」など交わせる状態でない。

  そこで、源氏は、顔を合わせるべく几帳を押しやる。しかし、花散里は嬉しそうな顔をするでもなくい(これは本文にないが、きっとそうであるに違いない)。「またさておはす」と言うのだから、身動きもせずじっとそのままにしていたということである。なんとも素っ気ない。また、「また」とあるから、源氏が来た時はいつもそうしているということだ。つまり、表情も変えなかったということになる(これも書かれていないがそうであるに決まっている)。

  几帳を押しのけたので、花散里の姿が見えるようになった。源氏の目にまず最初に飛び込んできたのが、暮れに彼女に贈った「縹(はなだ)」の衣装である。それが源氏には
  『げににほひ多からぬあはひ』
に見えたという。「縹色」とは、薄い藍色のことで、もともと地味で「にほひ」などにはほど遠い色である。そんな衣装を贈っておきながら、
  「本当に匂うような鮮やかさがない取り合わせである」
とは、花散里にとってはなんとも間尺に合わない評価である。玉鬘などには「山吹襲(黄色が基調)」の衣を贈っていて、
  『いと華やかに、ここぞ曇れると見ゆるところなし』
と言っているのだから、差別も甚だしい。

  次に、源氏の目は彼女の「髪」に当てられる。そして、やれ髪が薄くなっているの、鬘(かつら)を付けた方がいいの、と勝手放題の批判の目で彼女の髪を舐め回す。最後の殺し文句が
  『我ならざらん人は見ざめしぬべき御有様』
なのである。衣にしても髪にしても「私以外の男であったなら、完全に興醒めしてしまうだろう姿形」と言うのである。なんと失礼なことか。もちろん口に出して言っているわけではなく、心の中で思っているのであるが、それにしても辛辣な侮辱であることに変わりはない。
  そして結論は、「こんな女でも捨てもしないでいる自分はなんと気長い理想的な男であることよ」という我褒めなのである。そして、花散里が浮気心もなく心根の良い女であることをついでに褒めている。花散里が浮気などできる女ではないことを百も承知で評価するのだから、おかしなことである。
  花散里とすれば、源氏の内心の侮蔑はひしひしと身に感じ取っているはずである。それゆえに源氏が来ればいつも几帳を隔てにして彼の蔑視を避けていたのだろう。可能なら別れたいところであろうが、悲しいかな、彼女の実家は疾うに没落していて、六条院を去ろうにも行くところがない。

  そしてこの場面の最後がこう結ばれる。
  『細やかにふる年の物語など、なつかしく聞え給ひ』
  「こまごまと昨年度あったあれこれを、いかにも心惹かれるようにお話なさり」という意味である。衣装や容姿を批判的に見ながら、しんみりと話をするというのだから、ちぐはぐも極まりない。

  邸全体に気品が漂っていると褒めるかと思えば、衣装や髪の毛がみすぼらしいと咎める。夫婦仲を睦まじいと言いながら几帳越しの関係と言う。あるいは突然、花散里を浮気もしない心根の女性と誉める。とにかくこの場面は、つじつまの合わない行ったり来たりの理解しにくいくどい描写が多いのである。

  末摘花という女性は、容姿の悪さを除けば、確かに源氏も一目置くところがあったようである。裁縫や染色の技量は紫上に匹敵すると言っているし、家計のやりくりなどについても感心している。この『初音』の巻よりも前の『薄雲』の巻で、源氏は徹底して末摘花を褒めまくっている。
  彼女の暮らしぶりは申し分なく、任された二条東院の差配などは理想的である。
  そのために彼女に仕える女房や童などまで、きちんとしていて心遣いも十分である。
  心も穏やかでおっとりした人柄で、わが身をよく弁えている。
  それゆえ源氏は紫上に劣らない扱いをしている。
など全幅の信頼を寄せている。そのために息子・夕霧の世話を彼女にさせたり、玉鬘を一緒に住まわせたりしているのである。
 『初音』の巻の何か一貫しないちぐはぐな末摘花描写は、源氏の本音を抑えて、これらのことと整合性を図ろうとしたための矛盾としか考えられない。

  


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