FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←男たちの奮闘  源氏物語たより694 →理不尽な人の性  源氏物語たより696
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 郷愁
もくじ  3kaku_s_L.png 源氏
もくじ  3kaku_s_L.png 源氏物語
  • 【男たちの奮闘  源氏物語たより694】へ
  • 【理不尽な人の性  源氏物語たより696】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
 

源氏物語

変化を求めるという理不尽な人の性  源氏物語たより695

 ←男たちの奮闘  源氏物語たより694 →理不尽な人の性  源氏物語たより696
     変化を求めるという理不尽な人の性 源氏物語たより695

  人間の性(さが)というものは全く不可解なもので、これで満足ということを知らない。光源氏の心は、今はもっぱら朝顔にある。そのために内裏勤めが多く、紫上とは距離を置きがちである。こよなく愛する紫上がいて、彼女のことを理想的な女性であると思っているのだし、人にも紫上本人にもそのように言いもしているのに、それでも満足するということがない。
 
  ある雪がうち散る十一月のたそがれ時、源氏は朝顔を尋ねようとして、いかにも人の心を惹きつけるような着慣れた衣を着、香をこれ以上ないというほどに焚きしめ、心をこめて化粧に日がな一日専念していた。
  さすがに、紫上に何も言わないで出かけるわけにもいかないので、例の嘘を言う。
  『女五の宮の悩ましくし給ふなるを。とぶらひ聞こえになむ』
  女五の宮とは、朝顔の叔母のことで一緒の邸に住んでいる。随分の御歳ではあるがぴんぴんして。
  この事態は紫上にとってはなんとも忌々しいことで、つい不満顔になってしまう。でもそんな感情を露骨に出すわけにもいかず、明石姫君の扱いに紛らわして、源氏の方には目もくれない。そんな彼女の拗ねた姿を見た源氏は、
  「最近、随分様子がおかしいですね。私にはあなたにそんなに憎まれ疎まれるような罪もないというのに」
と事実とはほど遠いことを言いつつ、こんなことを言う。
  『塩焼き衣のあまり目馴れ、見だて(見映え)なくおぼさるるにや、とて途絶え置くを。またいかが(邪推される)』

  この言葉の本になっているのが次の二つの歌である。
  『須磨の海士の塩焼き衣馴れ行けば 疎くのみこそなりまさりけれ   伊行釈』
  (須磨の海士が塩を焼く時の衣が着慣れたためにすっかり見る影(見映え)もなくなってしまうように、あなたは見慣れた私のことを疎ましくばかり思うようになるのですね)  
  『馴れゆくはうき世なればや 須磨の海士の塩焼き衣間遠なるらむ  徽子王女』
  後者の歌は、村上天皇の女御である徽子(きし)女王が、天皇から「しばらく会わないからね」と言われた時に、冗談にか皮肉にかあるいは拗ねてか詠ったものか、意味は
  「馴れるにしたがって飽きが来るというのが世の常ですから、飽きないようにと私をお召しになる間をお開けになるのですね。丁度須磨の海士の塩焼き衣の織り目が粗いように・・」
である。

  それではこの二つの歌を踏まえた源氏の言葉はどのように解釈したらよいだろうか。
  「あの須磨の海士が塩を焼く時の衣が、着慣れたために見る影もなくなってしまうように、あなたにあまりに馴れ親しみ過ぎると見映えがなくなってしまうものですから、私はあえてあなたとの距離を保っているというのに(内裏勤めを多くしているというのに)。あなたはまたどんな邪推をしていられることやら」
  「私はあなたに飽きられないように、敢えてあなたとの距離を置くようにしているのですよ。それなのにあなたは・・」という源氏の身勝手な嘘であり得意な詭弁である。

  しかしここには人間のどうにもならない不条理な性というものが描き出されていて、単に源氏の身勝手とばかりは言い切れない真理が込められている。どんなに熱愛の結果結婚したとしても、馴れ親しんでいるうちに互いに新鮮さがなくなって来て飽きが忍び寄って来るものである。それは誰もが経験するまぎれもないことであり、誰もが止めることが出来ない事実である。「結婚は恋愛の墓場である」というのは誰が言ったものであろうか、人間のどうにも避けることのできない真実を見事に言い当てている。
  また「結婚するなら二番目に好きな人とせよ」と言った人もある。これもある意味確かなる真理である。一緒になればどうせ熱は冷めて来るのだし、年月とともに相手の粗も見えてきて新鮮さ(見映え)も失われていく。一番好きな人の粗は見たくないもの。それには離れて暮らすに限る。遠く離れてやるせない思いで恋い偲んでいれば、相手への愛の心も新鮮な感覚も薄らぐことはない。

  以前クラス会の時に、「家庭内別居」を話題にしたことがある。17,8人の参加者のうち、意外に多くの者が家庭内別居をしていることが分かった。「生活のサイクルが違う」などの理由が多かった気がするが、中には「鼾や歯ぎしりがうるさい」というような誠に現実的な理由を上げる者もいた。結婚前は、あばたも笑窪だったはずなのに。
  家庭内別居は、徽子王女の
  『馴れゆくはうき世なればや 須磨の海士の塩焼き衣間遠なるらむ』
の心を実現したものであるようだ。
  それでは、男が妻から飽きられないようにするにはどうしたらいいのだろうか。会社からの帰りを遅くするとか出張を多くするなども一つの方法であろう。しかしそうしばしばしていれば、妻に虫がついてしまう。身だしなみをきちっとすることなども、有効かもしれない。光源氏が香を焚き染めたり心ことに化粧に専念したりしたように。鼻毛など無頓着にしていれば即飽きに繋がってしまう。女も同じことである。とにかく夫婦の間にいつも緊張感が保たれていることが大切であろう。

  しかし、人間というものに変化(新鮮さ)を好むという性がある以上、いかにしても移り気を止めることはできない。またそれが本人のみならず、傍観者も心ときめきして面白いのだから、「浮気は諦めるが一番」と言うしかない。
  さて、紫上やお付きの女房たちは、源氏の浮気をどう思ったのだろうか。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 郷愁
もくじ  3kaku_s_L.png 源氏
もくじ  3kaku_s_L.png 源氏物語
  • 【男たちの奮闘  源氏物語たより694】へ
  • 【理不尽な人の性  源氏物語たより696】へ
 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【男たちの奮闘  源氏物語たより694】へ
  • 【理不尽な人の性  源氏物語たより696】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。