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源氏物語

夕霧の恋の二人の理解者  源氏物語たより698

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     夕霧の恋の二人の理解者   源氏物語たより698

  前回は、夕霧と雲居雁との恋が、彼女の父である内大臣に知られてしまって、ついにその間が割かれることになってしまった、という話をした。
  何日か後の夕方、内大臣が彼女を迎えに来ることになった。夕霧の悲嘆たるや計り知れないものがあった。そんな様子をあまりに不憫に思った乳母が、最後の対面の機会を作り出す。
  『宮にとかく聞こえたばかりて、夕まぐれの人のまよひに、対面せさせたてまつり給ふ』
のである。「たばかる」とは、「(謀を)思い巡らす」ということで、何かマイナスイメージが付きまとうが、「相談する」という意味もある。この場合は、宮(大宮)と相談してという意味が妥当になろう。悪く言えば、大宮と乳母が「ぐるになって」二人を援助したということである。
  というのは、大宮も、夕霧をこよなく可愛い孫と思っているし、雲居雁をも、この上ない心の慰みと思っているからである。夕霧と雲居雁とをこよなく寵愛する強力な援護者たちは、夕霧と雲居雁の悲恋をこのまま見過ごすことなどできるはずはない。ということで、夕方の人々が慌ただしくしている時に、「対面せさせたてまつり給ふ」運びとなったのである。

  晴れて最後の逢瀬が持たれるのであるが、逢っても
   『かたみにもの恥づかしく、胸つぶれてものも言はで泣き給ふ』
しかなかった。夕霧十二歳、雲居雁十四歳の秋のことである。
  この時の二人の悲しい別れについては「たより548」で扱ったところであるが、幼い者の恋の様子が実に哀しく描かれていて、紫式部の筆の冴えを見ることが出来る場面である。特に夕霧が雲居雁に囁く言葉は心に沁みる。
  「内大臣がつらく当たるので、いっそのことあなたとの恋は諦めてしまおうと思うのだけれども、でもこのまま逢えなくなってしまうかと思うと、あなたのことが恋しくて恋しくて毎日泣き暮らしているかもしれません」
  実に率直な心情の吐露である。これに対して雲居雁は
  『まろもさこそはあらめ』
と応じる。「私もきっと、あなたのことが恋しくてならないかも知れません」と言葉少なに幼げに応えるのだから、これもまたじんと胸に刺さる。

  こうした逢瀬の最中、ついに内大臣が迎えに来てしまう。夕霧は自分の部屋に籠って
   『涙のみ止まらねば、嘆き明かして』
霜の大層白く降りた朝、急ぎ大宮の邸から二条東院に帰って行く。その道々、こんな歌を詠う。
   『霜氷うたてむすべる明けぐれの空かきくらし降る涙かな』
   (霜がひどく凍り付いている夜明けの暗い空を、一層暗くするように降る涙の雨であることよ)
   「うたてむすべる」のは霜のみではない。彼の心そのものが固く凍り付いてしまっているのだ。その凍りついた心を、止めどなく流れ落ちる涙が、更に絶望的な気持ちにさせる。当分の間、彼は何を見ても「涙、涙」で日を過ごさなければならないのだろう。

  ここで再び二人の絶対的な愛撫者であり理解者であり援護者である乳母と大宮の話に戻ろう。そもそも乳母というものは、「我が主こそ絶対」と考え、盲目的に主に愛情を注ぐもので、このことについては今までも取り上げている。夕霧の乳母にしてもまた例外ではない。内大臣が、夕霧を許さなかったことに対して、彼女は憤懣やる方なく、激しい口調で大宮にこうぶちまけている。
  『いでや、(内大臣が夕霧を)ものげなしと侮づり聞こえさせ給ふに侍るめりかし。さりともげに我が君や人に劣り聞こえさせ給ふと聞し召し合はせよ』
  「内大臣様が、二人の仲を許さないのは、夕霧さまを侮っていらっしゃるからでしょうよ。夕霧さまが他の男に劣っているかどうか、聞き合わせてごらんなさいましよ」という意味で、何とも凄まじい。まさに乳母の本領発揮である。
  また彼女は雲居雁についてもこんなことを言っている。
  『(雲居雁さまは夕霧さまと)同じ君とこそ頼み聞こえさせつれ』
  つまり、雲居雁も彼女にとっては乳母子(めのとご)に当たるというのである。

  聞かされる大宮としてもたまらない。大宮の愛娘(葵上)は、夕霧を出産すると同時に亡くなっている。夕霧は大宮にとっては愛娘の忘れ形見なのである。可愛くないはずはない。また、愛娘を失ってぽっかり心に空洞ができたような状態にある時に、たまたま雲居雁が彼女に預けられた。それを今まで生き甲斐とし慰めとして来たのである。
  このまま二人の仲が割かれれば、二人は大宮の所に来ることはなくなってしまうであろう。内大臣がこの件に対していろいろ文句をつけて来た時に、大宮は内心こんなふうに思っていた。
  「夕霧はあんなにも優れた人物なのだし、宮家など家柄の良い女性と結婚するのもよいとさえ思っていた。雲居雁にしたって、ただ人を結婚相手とするのであるならば、夕霧以上に相応しい男などありはしない」
  このように強力な二人の援護者も、内大臣の片意地には何もなすすべはなかった。

  夕霧はすっかり世の中を拗ねてしまって、内裏勤めをさえ厭うようになってしまう。正月用にと大宮が夕霧のために立派な衣装を仕立てるのだが、それを見た彼は、
  「元日の参内などしないつもりでいるのに、なぜこんなに立派な準備をされるのですか」
と大宮に向かって拗ねる。彼の気持ちを十分わかっている大宮には、彼の拗ね言葉が身に沁みるのだが、こう言って咎めるしかない。
  「まあひどく年とった者のようではないの。すっかり気力を失くしてしまって・・」
  すると夕霧はまたこう拗ね返す。
  『老いねども、くづほれたる心地ぞするや』
  「くづほる」とは、「気落ちする、気がめいる」という意味である。十二歳の少年の初めての恋の破れは、それは気落ちするであろう。溺愛する孫のしょぼくれ姿は大宮にとってはやり切れない。「もっとしゃんとしなさい」と励ますのが精一杯で、夕霧の恋の破れを繕うための適当な言葉を見出すこともできない。
 
  優しく愛情深く見守る大宮と夕霧を絶対的に寵愛する乳母の後援もむなしく、夕霧と雲居雁は、没交渉のまま五年の歳月を過ごすことになる。しかしこの間に大宮ははかなくなってしまい、二人の結婚を見ることが出来なかった。
 


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